映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』あらすじ・感想【ネタバレなし】 | The Bird's Nest Hair  
【2020/02/14】New Article Update!

映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』あらすじ・感想【ネタバレなし】

2020年1月24日公開(アメリカでは2019年3月公開)の鬼才テリーギリアム監督最新作『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』のあらすじ・感想をまとめています。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』の評価

(C)2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mat o a Don Quijote A .I.E., Tornasol SLU

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』のレビュー
演出
(3.0)
音楽
(3.0)
ストーリー
(2.0)
キャスト
(5.0)
リピート
(3.0)
総合評価
(3.0)

鬼才テリー・ギリアム最新作『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』。

本作は良くも悪くも「無難」。

だれが観てもそこそこ楽しめる娯楽作品に仕上がっています。

テリーギリアムの0か100の極端な世界感を期待していたので、ややがっがり、といった感じです。

アダム・ドライバーの演技だけは、本作でも相変わらず光りまくってます。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』スタッフ&キャスト

(C)2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mat o a Don Quijote A .I.E., Tornasol SLU

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』スタッフ

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』スタッフ
監督テリー・ギリアム
脚本トニー・グリソーニ
原作ミゲル・デ・セルバンテス(『ドン・キホーテ』)
製作ヘラルド・エレーロ/マリエラ・ベスイエフスキー/グレゴワール・メリン/エイミー・ギリアム
撮影ニコラ・ペコリーニ
音楽ロケ・バニョス

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』キャスト

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』キャスト
ドン・キホーテジョナサン・プライス
トビー・グリソーニ(CM監督)アダム・ドライバー
ボス(トビーの上司)ステラン・スカルスガルド
ジャッキー(ボスの妻)オルガ・キュリレンコ
ジプシー(トビーと旅を共にする謎の人物)オスカル・ハエナーダ
農家の妻ロッシ・デ・パルマ
ルパート(トビーのエージェント)ジェイソン・ワトキンス

ジョナサン・プライス

名優、ジョナサン・プライス。

近年では『2人のローマ教皇』で魅せた演技が、とにかくよかったですね。

アダム・ドライバー

2010年代最もブレイクした俳優アダム・ドライバー。

『スターウォーズ』のような超大作から、所謂ミニ・シアター系まで…

映画の規模や役柄を限定せずに、すべて自分の持ち味で完璧に料理してしまう、才能と存在感。素晴らしいです。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』の呪われた製作の歴史

(C)2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mat o a Don Quijote A .I.E., Tornasol SLU

1988
映画『バロン』公開
巨額の製作費を掛け、イタリアのチネチッタ撮影所に巨大セットを建設した本作だったが、様々なトラブルを乗り越えての公開だった。本作完成後、すぐにギリアム監督は「ドン・キホーテ」企画への意欲を示す。
1998
プリ・プロダクション開始
ヨーロッパ資本で、当時のヨーロッパ最大規模3120万ドルの予算を集める。
2000
クランクイン
9月、スペイン・マドリードで撮影が開始。撮影初日、撮影地がNATO軍用地に近く、戦闘機の音で録音出来ない事が発覚。撮影二日目、大雨が鉄砲水を起してしまい撮影機材が流され、ロケーションも変わってしまった為初日の映像が使えなくなった。11月、撮影中止が決定。保険会社が、1500万ドルの保険金を支払うことに。(脚本の権利が、保険会社に移る)
2002
映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』公開
2008
プリプロダクション再び
11月、ギリアム監督が、キャスティングを完了したと発言。12月、ロバート・デュバルが、自身がドン・キホーテ役に選ばれたと取材に答える。ギリアムはこれを認め、ジョニー・デップの出演を想定とも発言。しかし、ジョニー・デップは自身のスケジュールに「ドン・キホーテ」の撮影が入る余地はないと発言。
2009
再々プリプロダクション
1月、再び、プリ・プロダクションが開始される。権利が戻ったことを受け、ギリアム監督と、グリゾーニは脚本の再執筆に入る。8月、ジョニー・デップの降板発表。
2010
資金問題
ギリアム監督が取材で、資金繰りの問題で再撮影が止まっていると発言。
2014
資金確保
ギリアム監督が取材で、資金確保と脚本が変わったことを明かす。ジョン・ハートが、ドン・キホーテ役に決定したと報道が出る。
2015
映画製作中止
クランクイン直前、ジョン・ハートの膵臓がんが発覚。映画制作が中止に。 中身4
2016
資金確保失敗
5月、カンヌ国際映画祭で、ギリアム監督が同年10月クランクインと発言。アダム・ドライバーとオルガ・キュリレンコの出演も明かし、新たなコンセプトアートも公開された。10月、プロデューサーのパウロ・ブランコから資金確保の失敗による制作延期が発表。これを受けてギリアム監督は、「映画が死ぬ前に、自分が死ぬんじゃないか」と発言。
2017
17年越しのクランクアップ
3月、クランクイン。6月、ギリアム監督が、自身のFacebookでクランクアップを発表。最初のクランクインから17年掛けての撮影終了となった。11月、完成間近であることを、ギリアム監督が明かす。
2018
公開
5月、フランス公開。カンヌ国際映画祭で、クロージング作品としてプレミア上映。6月、スペイン公開。権利問題に関する判決が出て、ギリアム監督の映画化権が剥奪。世界各国での上映が白紙に。12月、スクリーン・メディア・フィルムズが北米配給権を獲得。

※公式HP参照

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』あらすじ

(C)2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mat o a Don Quijote A .I.E., Tornasol SLU

自らをドン・キホーテと信じる老人と若手映画監督の奇妙な旅路を描く。仕事への情熱を失っていた若手CM監督のトビーはスペインの田舎での撮影中、謎めいた男からDVDを渡される。それはトビーが10年前の学生時代に監督し、賞にも輝いた「ドン・キホーテを殺した男」だった。映画の舞台となった村が近くにあることを知ったトビーは、現地を訪れるが、ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエルが自分を本物の騎士だと信じ込むなど、村の人々はトビーの映画のせいですっかり変わり果てていた。トビーをドン・キホーテの忠実な従者サンチョだと思い込んだハビエルは、トビーを無理やり連れ出し、冒険の旅へ出るが……。

映画.com

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』感想

(C)2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mat o a Don Quijote A .I.E., Tornasol SLU

理由はどうあれ、人は、少しのあいだ現実から逃れるために、映画を観る。

「現実逃避」、それこそが映画鑑賞の目的だ。

人々は現実の喧騒から逃れるために、映画が作り出す空想の世界に心をトリップさせる。

そう思うと、映画館はさながらシェルターのようでもある。現実世界から逃れてきた人が集うシェルター、避難所。

1月24日の「TOHOシネマズなんば スクリーン9」には、僕と同じように現実から逃れてきた人たちの姿があった。

満員とまではいかないが、“そこそこ”入っている。

それぞれがそれぞれの思いで、今日、この映画を観るために、このシェルターにやって来たのだろう。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』

ジョナサン・プライスが演じる本作の主人公は、自分をドン・キホーテだと信じて疑わない老人だ。

妄想に囚われ、妄想の世界に生きる住人。

馬鹿にされ、笑われ、狂った人物という烙印を押される孤独な老人。

この男を憐れだと思うだろうか?

映画を観ている観客と、一体何が違うのか?

人は、現実から逃れるために映画を観る。

観客を現実から連れ出し映画の世界へと導く力は、名作の絶対条件だ。

「感情移入」と言う言葉がある。

他人の言葉や表情をもとに、その感情や態度を追体験すること。共感。
自然や芸術作品などの対象に自分の感情を投射し一体化すること。

そう、一体化だ。

現実から逃れるために映画を観ている観客、作り物の人物に感情移入している観客と、自分をドン・キホーテだと信じる男は何かが違うか。いや、何も違わない。

観客と自称ドン・キホーテは、イコールだ。

だから、僕は彼を笑わない。

感想

さて、肝心の感想だが、ハッキリ言って、良くもなく、そして、悪くもなかった。

この映画が数多の制作難に見舞われ、やっとの思いで完成までこぎつけたことを、もちろん知っている。テリー・ギリアムのことは大好きな映画監督というほどではないが、彼の有名作品は一通り、観ている。

もちろん、それなりの期待があった。

あの鬼才映画監督が30年の時をかけて完成させた「世紀の作品」。

しかし、本作を見終えて痛感したことは、完成までの苦労話は映画の出来には関係ない。という事実だった。

僕は、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』に0か100を期待していた。

世紀の珍作か、それとも、世紀の傑作か…

振り切った“何か”を望んでいた。凡人には決して理解も想像もできない、目も眩むほどの強烈な世界への冒険を求めていた。

しかし、僕は終始、映画館の座席に座っていた。ただ、スクリーンを見ていた。その感覚が、ずっとあった。

僕は、ドン・キホーテにはなれなかった。映画の世界を旅することは叶わなかった。

作品自体は悪くはなかった。5段階中の3。100点満点中の50点。本当に可もなく不可もなくといったところ。

主演、アダム・ドライバーの演技は素晴らしかった。彼に演じられない役柄は存在するのだろうか。大好きな俳優だ。

しかし、思い返してみればアダム・ドライバーの演技しか頭に残っていない。あのシーンのアダム・ドライバーが良かった、あのシーンのアダム・ドライバーも良かった…

俳優の演技ではなく、映画として心に刺さったシーンを挙げるげることができない。

「無難」にまとめれたストーリー、演出、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』に、テリー・ギリアムの才気ほとばしる狂気やカオティックを感じることは、出来なかった。

『未来世紀ブラジル』や『バンデットQ』『12モンキーズ』をはじめて観た時に感じた、猛毒に侵されたような快感はなかった。

僕はドン・キホーテには、なれなかった。