『バスターのバラード』あらすじ・ネタバレ・感想【コーエン兄弟が描く死と笑い】 | The Bird's Nest Hair  
【2020/03/04】New Article Update!

『バスターのバラード』あらすじ・ネタバレ・感想【コーエン兄弟が描く死と笑い】

Netflixで独占配信されているコーエン兄弟最新作『バスターのバラード』のあらすじ(ネタバレ含む)と感想をまとめています。

全6本の短編からなる『バスターのバラード』は、全ての短編に「死と笑い」という共通のテーマを持たせることで、オムニバス作品にありがちな「まとまりのなさ」を回避しています。

このことは評論家たちからも絶賛され、第75回ヴェネツィア国際映画祭では「脚本賞」受賞、第91回アカデミー賞では「脚色賞」「歌曲」「衣装デザイン賞」の3部門にノミネートされています。

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コーエン兄弟の十八番「ブラック・ユーモアと暗いドラマの融合」が過去最高のレベルで実現した名作です。

『バスターのバラード』概要

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

「ノーカントリー」のジョエル&イーサン・コーエン兄弟が製作・監督・脚本を手がけた西部劇アンソロジー。「オー・ブラザー!」のティム・ブレイク・ネルソンが陽気な凄腕ガンマンを演じる表題作をはじめ、ブラックユーモアや皮肉を散りばめたバラエティ豊かな6話で構成。キャストには「ディザスター・アーティスト」のジェームズ・フランコ、「96時間」シリーズのリーアム・ニーソン、「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」のゾーイ・カザン、「セブン・サイコパス」のトム・ウェイツら豪華な顔ぶれがそろった。2018年・第75回ベネチア国際映画祭で脚本賞を受賞

映画.com

『バスターのバラード』スタッフ&キャスト

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

スタッフ

『バスターのバラード』スタッフ
監督コーエン兄弟(ジェエル・コーエン/イーサン・コーエン)
製作コーエン兄弟(ジェエル・コーエン/イーサン・コーエン)
脚本コーエン兄弟(ジェエル・コーエン/イーサン・コーエン)
撮影ブリュノ・デルボネル
音楽カーター・バーウェル

監督・制作・脚本:コーエン兄弟

「コーエン兄弟の作品に外れ無し説」が、最新作『バスターのバラード』でまたも実証、記録を更新しました。

コーエン兄弟の十八番「ブラック・ユーモアと暗いドラマの融合」が過去最高レベルで実現しているのが、本作『バスターのバラード』です。

『バスターのバラード』キャスト

『バスターのバラード』キャスト
バスター・スクラッグスティム・ブレイク・ネルソン
銀行強盗のカウボーイジェームズ・フランコ
老い興行師リーアム・ニーソン
アリス・ロングボウゾーイ・カザン
老婦人タイ・デイリー

『バスターのバラード』あらあすじ(ネタバレ)

①:「バスターのバラード」

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

荒野を駆けるホワイト・カウボーイ、バスター・スラッグス。白い洋服に包み、白馬に跨るこの男は、早打ちのガンマンだった。

そうそう、それと、彼は歌をこよなく愛するカウボーイだった。

道中、バスターは酒を求めて一軒のバーに立ち寄る。しかし、彼は酒を売ってはもらえなかった。何故って?それは、バスターが陽気なカウボーイだったから。

破落戸数名と銃を撃ち合う騒動になるが、そこは天下の早打ちガンマン、バスター・スラッグス。

いともたやすく数のガンマンをあの世に葬り去る。

「人は見かけで判断しちゃいけないぜ」

結局、酒のありつけなかったバスターは、次の町では必ず酒に口づけをかわすことを、固く決意する。

やってきた、次の町。この町にある酒場は、銃を店主に預ければ入店できないという決まりがあった。

「裸になった気分だぜ」

そう言いつつ、バスターは快く銃を差し出し、店に入る。

ひとつのテーブルでポーカーゲームが行われていた。ゲームに参加しようとするバスターだったが、差しだされた手札があまりにも悪手だったため、彼は席を立ち、ゲームから抜けようとする。

しかし、それを許さないカーリー・ジョーと名乗るひとりの男。彼の両手には、隠し持っていた二丁の拳銃が握られている。

引き金を引き、銃を突きつけられ、脅されても、全く動じないバスター。

バスターは、緩んだテーブルを勢いよく踏みつける。木の板が、まるで梃子のようにカーリー・ジョーの手を、下から上へと突き上げる。

引き金を引いたカーリー・ジョー拳銃は、カーリー・ジョーの頭を吹き飛ばした。

バスターは銃を使わずに勝った。

この荒野に彼を超える男が存在するのだろうか。いや、存在しない。するはずがない。

バスターは、一人の若い男に決闘を申し込まれる。

黒い服を着た、バスターとは正反対の男だ。

砂塵舞う荒野の街。

轟く一発の銃声。

血を流していたのは、バスターだった。彼の白いカウボーイハットが赤に染まる。

バスターは死んだ。

しかし、バスターは亡霊になって陽気に歌う。黒い服を着た若者と、陽気に歌を歌う。

バスターのバラードを。

②:「アルゴドネス付近」

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

荒野に申し訳なさそうに佇む一軒の銀行。周りには何もない。銀行の守り人は、しょぼくれた老人たったひとり。

この場所で銀行強盗を考える者は、少なくない。

若いカウボーイは、銃を突きつけ老人を脅迫する。

しかし、老人は、まるでマニュアルに書かれた手順をそのまま行動に移すかのような、一切の無駄の無い所作で、あっさりと若いカウボーイを返り討ちにしてしまう。

未遂とはいえ、重罪な銀行強盗を犯した若いカウボーイの末路は、くくり首の死刑。

カウボーイの死刑が執行されようとしたそのとき、砂塵を立ててコマンチ族(インディアン)が現れた。死刑執行人だった保安官たちはコマンチ族に皆殺しにされ、若いカウボーイは結果的に命拾いした。

通りすがりの家畜商人によって縄をとかれたカウボーイは、しかし、またもや保安官に御用となってしまう。

じつは家畜商人は商人ではなく、泥棒だったのだ。

重罪な家畜泥棒を犯した若いカウボーイの末路は(犯してはいないのだが)、くくり首の死刑。

③:「食事券」

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

年老いた興行師は、ロンドンであるものを見つけた。それは、四肢が欠損した青年ハリソン。

町から町へ、二人は生きるための興行の旅をする。

ハリソンは毎晩舞台に立ち、パーシー・ビッシュ・シェリーの『オジマンディアス』、カインとアベルの聖書の物語、ゲティスバーグ演説、シェイクスピアなどを暗唱して見せる。

観客が投げいれるコインは、ハリソンが話す物語にではない。あくまで、彼は見世物であり、観客からのコインは、彼への憐みの対価だ。

ある夜、興行師は世にも珍しい「計算が出来る鶏」を手に入れる。

鶏は良い。人間と違って世話がかからない。食べものは地べたにばら撒くだけ、毎日の世話も何もいらない。

興行師にとってハリソンは、要らぬものになった。

その後、ハリソンの姿を目にしたものはいないという…。

④:「金の谷」

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

人里離れた山奥の谷に、ひとりの老人の姿があった。

透き通った小川、青々と茂る草木、トナカイ、フクロウ…まるで、おとぎ話のような美しい谷だった。

しかし、老人はこの地に、バードウォッチングで訪れたわけでも、狩りで訪れたわけでもない。

老人の目当ては金だった。

老人は毎日穴を掘った。そしてある日、ついに老人は金の鉱脈を見つける。

喜びに震える老人。ついに苦労が報われた瞬間だ。

しかし、老人の身体を貫いたのは喜びでも興奮でもない、一発の弾丸だった。

若い男は、老人が金を見つけるこの日をずっと待っていた。老人を背後から撃つ。老人は血を流し、倒れる。

金を採掘するため、老人が掘りあてた穴に降りる若い男。

次の瞬間、若い男の脳天が吹き飛ぶ。さらに一発、二発、容赦ない弾丸の雨。

若い男は死んだ。老人は死んでいなかった。

老人は金を採掘し、若い男を穴に埋め、谷を後にした。

⑤:「早とちりの娘」

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

兄のギルバートと妹のアリスは新天地を求めて、キャラバンとともにオレゴンへと向かう。しかし道中、兄のギルバートはコレラで死んでしまう。

オレゴンへの道のりはまだまだ遠い。

兄を失い途方に暮れるアリス。そんな彼女を見かねたキャラバンの護衛ビリーは、何かと彼女を気に掛ける。もう一人の護衛アーサーも、口には出さないが彼女のことを心配していた。

旅は長い。

アリスは次第にビリーの誠実さに惹かれていく。そして、ビリーもまた彼女の人柄に惚れていく。

「オレゴンに着いたら、俺と結婚してくれ」

ビリーはアリスに結婚を申し出る。アリスの返事はOKだ。

ある日、キャラバンの中にアリスの姿が見えないことに気づいたベテラン護衛のアーサーは、急いで彼女を探す。嫌な予感がする…。アーサーの長年の勘が、彼にそう告げていた。

アリスはすぐに見つかったが、同時に、アーサーの嫌な勘も的中してしまう。

二人を見る、おびただしい数の人の目。ネイティブアメリカンの軍団が、アリスとアーサーを狙っていた。

戦いの最中、怯えるアリスにアーサーは告げる。

「俺が死んだら、この銃で自分自身の頭を撃ち抜け、躊躇わずに。もし、捕まってしまったら死よりも辛いことが、君を待っている。」

そう言って、アーサーはアリスに、拳銃を一丁差し出す。

闘いは壮絶を極めた。

激しい銃撃戦の末、ネイティブアメリカンの軍団の長は死に、軍は撤退。
戦いは終わったかに見えたが、油断したアーサーを一人の戦士が襲う。

斧で顔面を殴られたアーサーは地面に伏す。戦士がとどめを刺すため近づいた瞬間、アーサーは敵を撃ち抜き、戦いに真の終止符を打った。

アーサーが最後の戦士を撃ちぬいた時同じくして、アリスもまた自らの頭を撃ちぬいていた。

アーサーが殺されてしまったと思ったアリスは、アーサーに言われた通りに、自分で自分を撃った。

早とちりの娘。

アーサーは、ビリーに合わせる顔がなかった。

⑥:「遺骸」

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

フォトモーガンに向かう馬車の中、大の大人が5人、窮屈そうに乗り合わせていた。

老婦人、猟師、フランス人の男、アイルランド人の男とイギリス人の男の二人組…

5人と言ったが、アイルランド人とイギリス人は馬車の上に死体を載せているという。死体を含めれば6人だ。

馬車の中は、どうでもいい話で溢れていた。誰も相手の話しなど聞いてはいない。ただ。自分が話したいだけだ。

しかし、老婦人が持病の発作で苦しみだしたことで馬車の空気は一変する。

猟師もフランス人の男も大慌て、老婦人は今にも死にそうな有様だ。

アイルランド人が歌を歌い、皆をなだめることにした。

アイルランド人はイギリス人と組んで、賞金稼ぎをしているのだという。

イギリス人が相手の気を引く隙に、自分が相手を仕留める。これが常套手段だと…。

空気はまたも一変する。

馬車は、無事にフォトモーガンのホテルに到着する。イギリス人とアイルランド人は慣れた手つきで、死体を下ろして部屋に運ぶ。

老婦人と猟師とフランス人の男は、おそるおそるホテルへと入っていく。

『バスターのバラード』感想

『The Ballad of Buster Scruggs』Courtesy of Netflix

 

6本の短編はすべて「死と笑い」がテーマとして描かれています。

あっさりと殺され亡霊になったバスターは、自分を殺した相手とデュエットを歌い、一命を取り留めたカウボーイは結局、無実の罪で絞首刑に、鶏に取って代わられた四肢欠損の青年は、川に投げ捨てられ、油断した若い男は老人に返り討ちにされ、山に埋められる。早とちりの娘は撃たなくてもいい自分の頭を撃ち抜き、馬車の中で自分勝手に騒いでいた連中は、自分たちの目の前に座る二人組が殺人者だと知ると、しぼんだ風船のように静かになる。

思わず笑ってしまう悲劇。

笑うしかない悲惨な出来事。

笑いと悲しみは表裏一体。

ゆるぎない残酷な事実を、まるで童話のような短編集で描いてみせるコーエン兄弟のセンスの良さ。

テーマを一貫させることで、オムニバスにありがあちな「まとまりのなさ」を回避している点も素晴らしい。

鑑賞後には静かな余韻とともに、色々と考えさせられますが、観ている最中はあれこれ考えず、単なる娯楽作品として楽しむのが正解です。

ひじょーに面白い。