【感想・ネタバレ】『空の青さを知る人よ』は、青く滲んだ思い出をもう一度描き出す物語 | thedeeprivers

【感想・ネタバレ】『空の青さを知る人よ』は、青く滲んだ思い出をもう一度描き出す物語

2019年10月11日『空の青さを知る人よ』公開初日。
早速、鑑賞しました。

結論から言うと『空の青さを知る人よ』は、”超平和バスターズ”の最高傑作です。(“超平和バスターズ”は、アニメーション監督 長井龍雪、脚本家 岡田麿里、キャラクターデザイナー 田中将賀で結成されたアニメ制作チームです。)

※当記事はネタバレを多く含みます。ネタバレNGの方は、そっとページを閉じてください。
あなたが鑑賞したあと後にまた、感想を語り合いましょう。

『空の青さを知る人よ』 概要

 

2011年の放送開始とともに”号泣アニメ”と話題沸騰、2013年には劇場版も公開され、社会現象と化した『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』。
続く2015年の劇場公開映画『心が叫びたがってるんだ。』とともに、アニメ監督・長井龍雪の評価を確立することとなったこの2作は、「大人も泣ける感動アニメ」として多くのファンに支持されてきました。

そして2019年、秋。『あの花』『ここさけ』をともに作り上げてきた脚本家・岡田麿里、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀と再びタッグを組んだ最新オリジナルアニメーション映画『空の青さを知る人よ』がついに公開。
声の出演は、吉沢亮・吉岡里帆・松平健ら演技派俳優陣と、新人の若山詩音、落合福嗣・大地葉・種﨑敦美ほか人気声優陣が集結。個性豊かな実力派キャストが作品の世界観を見事に表現しています。

さらに、物語を彩る、せつなくもドラマティックな主題歌は、大人気アーティスト・あいみょんが本作のために書き下ろし。
せつなくて少しふしぎな恋の物語『空の青さを知る人よ』が日本中をあたたかい涙で包みます。

 

出典:空の青さを知る人よ公式HP

『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』のフル動画を無料で視聴したい方は、下の記事をチェックしてください。

『空の青さを知るものよ』 あらすじ

 

山に囲まれた町に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。将来の進路を決める大事な時期なのに、受験勉強もせず、暇さえあれば大好きなベースを弾いて音楽漬けの毎日。そんなあおいが心配でしょうがない姉・あかね。

二人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、二人きりで暮らしてきたのだ。あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。姉の人生から自由を奪ってしまったと…。

 

そんなある日。町で開催される音楽祭のゲストに、大物歌手・新渡戸団吉が決定。そのバックミュージシャンとして、ある男の名前が発表された。金室慎之介。あかねのかつての恋人であり、あおいに音楽の楽しさを教えてくれた憧れの人。高校卒業後、東京に出て行ったきり音信不通になっていた慎之介が、ついに帰ってくる…。

それを知ったあおいの前に、突然“彼”が現れた。“彼”は、しんの。高校生時代の姿のままで、過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。思わぬ再会から、しんのへの憧れが恋へと変わっていくあおい。一方で、13年ぶりに再会を果たす、あかねと慎之介。

 

せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。

 

出典:空の青さを知る人よ公式HP

『空の青さを知る人よ』キャスト・スタッフ

出典:FASHION PRESS

キャスト
金室慎之介・しんの:吉沢亮

相生あかね:吉岡里帆

相生あおい:若山詩音

新渡戸団吉:松平健

中村正道:落合福嗣

中村正嗣:大地葉

大滝千佳:種﨑敦美

スタッフ

監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
音楽:横山 克
主題歌:あいみょん
原作:超平和バスターズ
企画・プロデュース:清水博之・川村元気・斎藤俊輔
美術監督:中村 隆

制作:CloverWorks

『空の青さを知る人よ』感想・ネタバレ

※以下、ネタバレを存分に含みます。

『空の青さを知る人よ』登場人物

①:ヒロインではなくヒーローの『相生あおい』

ヒロインではなく、ヒーローです。あおいは。

不器用で無愛想だけど誰よりも強い意志を宿す今作の主人公、相生あおい。

人生に迷える高校3年生の女子高生ですが、か弱いヒロインというよりは、一本筋の通ったヒーローのような存在。

今までのアニメではあまり描かれてこなかった主人公像です。

姉、あかりを縛る存在は自分だと思い込み、自分が東京に出ていくことで姉は自由になると信じ、一人上京を考える強い意志。

そして、毎日毎日たった一人でベースを練習するストイックさ(プロも絶賛する腕前)

ヒーローと少女のギャップ

普段は一匹狼でストイックな“イケメンあおい”だからこそ、しんのに恋した時の“女の子あおい”とのギャップがとても可愛らしく、人間らしさが溢れます。

ヒーローと少女のギャップが、生身の人間の温かさを感じさせます。。

②:誰よりも強い心を持つ『相生あかり』

マイペースなほんわか天然系キャラかと思いきや、本当は誰よりもしっかり者で自分を持っているのがこの物語のヒロイン、相生あかり。

クライマックスの落石事故遭遇など、今作のヒロインとして描かれているのが、あおいの実姉であるあかりです。

誰よりもしっかり者で大人の女性らしい品のある装い…でも色々と悩む31歳

もう大人だけど、まだ大人になりきれていない…そんな微妙な年齢ならではの葛藤や心の動き、それがとても素敵なキャラクターです。

あかりの努力

いつも笑顔を絶やさない、優しくてなんでもできる完璧な姉になるために、たった一人で想像を絶する努力を行っていたあかり…。

あかりの努力を知ったあおいの涙は、今作の見どころのひとつです。

二人そろって努力家でストイックな姉妹です。

そして大事なことは、あかりは”あおいのお姉さんとしてではなく、もう1人の主人公として描かれている”ということです。

あおいとあかり、二人の姉妹の物語です。

③:高校3年生のしんの

思春期ならではの万能感、明るく快活で、まるで空に浮かぶ太陽のような高校3年生のしんの。

お調子者で楽観的な単細胞系キャラかと思いきや、視野が広く周りによく気が付く自頭の良さもある、意外に大人なキャラクターです。

しんののルックス

その装いにも注目で、少し丈の短い学ラン、つんつんに立たせた髪の毛、大袈裟な腰パン…

13年前に流行ったスタイルがきちんと再現されていて、現在27歳の僕は懐かしい気持ちになりました。

④:31歳の慎之介

人生の酸いも甘いも知ったような渋みを増した、大人しんのすけにも注目。

夢敗れたわけでもないけど、目指しているところにはまだ全然たどり着けていない…

もどかしい現実、ダサい自分…

でもやっぱり、音楽が大好きで離れられない自分…

慎之介のルックス

それは服装や身につけているアクセサリーにも現れていて、やはり一般人とは違ったオーラがあります。

『言葉』という鎖

『空の青さを知る人よ』は、過去の自分の言葉によって囚われてしまい“未来”が分からなくなってしまった3人の物語です。

①:あおいの言葉

13年前に交通事故で幼くして両親を失ってしまった、あおいとあかり。

当時高校3年生だったあかりは、恋人だった金室慎之介(しんの)に一緒に上京しようと誘われていました。

しかし、まだ5歳のあおいは、二人の間に割って入ってしまいます。

「あおいとあか姉はずーっと一緒なんだから!」

あかねは地元 秩父の市役所に就職。

しんのは人知れず迷った結果、ミュージシャンの夢を追い求めるため一人上京、二人の道は別々に。

 

あおいは、13年経った今でも、あの時の言葉をずっと後悔していました。

「ずっと一緒だから」

あの一言によって自分は、あか姉を縛っているのではないか…

自責の念を一人抱えて、あおいは地元を離れ東京に行かねばと思っているのです。

あかりを自由にするために。

②:あかねの言葉

一方あかねは、「自分の人生はすべて自分で決めてきた。誰かに振り回されて決めたことなんて何一つない」と断言しますが、“自分で決めてきた”ことにこだわりすぎて、あおいをどこか子ども扱いしている節があります。

今のあおいが、あの時の自分と同じ年齢であることを認識するのは、この物語のラストです。

③:慎之介の言葉

あの日、一人東京へ行くことを決意したしんの。

「おれは、ビッグなミュージシャンになってあかりを迎えにくる」

そう、自分にかけた呪い。

あれから13年後…決して夢破れたわけではなくても、理想とはかけ離れた現在に苛立ちを募らせる31歳の慎之介。

『空の青さを知る人よ』の登場人物は、相手のことを思うあまり、自分が本当にやりたかったこと、なりたい自分、夢を見落としてしまっているのです。

そして、そんな3人の心を救う存在こそ”しんの”です。

“しんの”の存在

3人の夢と過去

ある日、あおいが日々ベースの練習を行っている”お堂”に突然現れた”しんの”。(しんのは、高校時代の慎之介のあだ名)

しんのは、幽霊や生霊と呼ばれる実体のない存在ではなく、人や物に触れることもできるしご飯を食べることもできます。(お腹は空かない模様)

ただし、しんのはお堂から一歩も外に出ることができません。見えない“壁”によって外にでられないのです。

つまり、お堂は3人にとっての過去であり後悔を表す空間として描かれています。

そして、しんのは3人の夢を体現した人物だと言えます。

誰かではない、3人の自分のための夢を表している、それがしんのです。

そんなしんのが過去であるお堂から飛び出そうとする過程、そしてついに飛び出したラストのよって、3人を縛る過去の鎖が引きちぎられたことを描いています。

しんのとあおい

しんのと心を通わせる日々であおいは、しんのに恋をしてしまいます。

決して叶うことはないと知っていながらも好きにならずにはいられない、乙女の純情。

自分の恋とあかりの幸せ…

どちらか一方を迫られる中で、あおいは自分の本当の夢に気づきます。

しんのと慎之介

ラストシーンではじめて向かいあった二人

13年前の自分と13年後の自分。

なりたかった自分とは少し違うかもしれない31歳の自分の姿…

しんのは慎之介に叫びます。

「おれをがっかりさせないでくれ」

と。

色々大変なこともあるんだろうけど、理想とは違うけど、でもお前は夢を叶えた側の人間だ。

でも、お前がこの場所は違うと思うなら、まだ頑張れ。

そう、しんのは13年後の自分に肯定的です。

歳を重ねるにつれて少年時代を美化して、自分とのギャップに苦悩して、そんな大人が慎之介でした。

13年前の自分に肯定され、鎖がとれた慎之介は、あかねのもとに走り出します。

しんのの正体

13年前のあの日、あかねに振られた慎之介。

自分が思い描く夢には、すべてあかねの姿があった。あかりが隣にいたからこそ夢を追いかけたいと思った。

自分一人で上京することに、迷う慎之介。

「この場所に、残ったままでもいいかな…。」

あかねと一緒に選んだ大切な真っ赤なギターとともに封じ込めた、あの日の慎之介の気持ち。それがしんのだったのです。

この場所に残りたい、その思いの塊ががしんのだったのです。

あかねのピンチ、慎之介との対面によって、しんのをお堂に縛り付ける鎖はついに砕けます。

大空を翔けるあおいとしんの

『空の青さを知る人よ』のクライマックスは、秩父の街、森、そして空を翔けるあおいとしんのの姿でしょう。

かつてあおいが“牢獄”だと評した秩父を、軽やかに飛ぶ周るラストシーン。

“牢獄”は、”どんな夢でも叶う場所”へと変わっていきます。

あおいは、早くこの場所から出たいと願い続けたその場所は、窮屈で仕方無かったその場所は、

本当は、とても美しい場所だと気づきます。

そして、叶わない初恋と知っていながらも、今この時に幸せを感じるあおい。

そんな、あおいに不器用ながらも笑いかけるしんの。

空の青さ。素晴らしいシーンです。

「牢獄」は「どんな夢でも叶う場所へ」

冒頭であおいに「牢獄」と評された秩父は、3人の言葉の鎖が壊れることで「どんな夢でも叶う場所」へと色鮮やかに移り変わります。

夢がかなった証拠に、エンドロールでは慎之介とあかりの結婚式の光景。うれし涙で号泣するあおいとあかりの姿。

そして、あおいの青いベースと慎之介の赤いギターが、二つ立て掛けられている写真もあります。

 

目の中にほくろがある、あおいとしんの。

ほくろスターの二人。

13年前、しんのはあおいに言いました。

「大きくなったらお前は、俺のバンドのベーシストだ」。

その言葉を胸に、ただひたすらにベースに打ち込んできたあおい。

あの日の言葉が、あの日の夢はきっと叶ったのでしょう。

MVPは吉沢亮

今作のMVPは間違いなく吉沢亮です。

一人二役といっても過言ではない、しんのと慎之介を見事に演じきっていました。

やんちゃでお調子者のしんの。

やさぐれ、人生を諦めかけ、それでも夢を諦めきれない慎之介。

別人のようでいて地続きな二人を、見事に演じ分けていました。

しんのと慎之介の声優を変えるという案もあったそうです、しかし、そうしてしまうと、この映画に説得力はなかったでしょう。

しんのと慎之介、同じ声帯だからこそ、二人の声は多くの人に響くのです。

そして吉沢亮が歌うあいみょんの「空の青さを知る人よ」は必聴です。

空は、青い

鑑賞後、空を見上げました。

そこには鮮やかな秋空がありました。

「そういえば最近、空を見てなかったなぁ」なんてことを思いながら歩きます。

失恋したあの日の空の色を今はもう思い出させないけど、きっと綺麗な青色だったんだと思います。

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