『ムーンライト』あらすじ・感想【ひとりぼっちのための人生の応援歌。】 | The Bird's Nest Hair  
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『ムーンライト』あらすじ・感想【ひとりぼっちのための人生の応援歌。】

「黒人貧困社会における性的マイノリティ」という、これまでに誰ひとりとしてライト(光)を当ててこなかった世界を描いた作品が、アカデミー賞作品賞という映画界最大のライト(栄誉)を浴びた。

というくだりは2019年の現在、間違いなく周知の事実です。

『ムーンライト』という作品が映画界を変えたことは確かに事実ですが、しかし、それだけではありません。

『ムーンライト』は世界中で生きるすべてのひとりぼっちの人生にもライト(明かり)を灯したのです。

「孤独に悩むのはお前だけじゃない。」

「シャロン」という一人の男の人生が、僕たちにそう教えてくれるのです。

『ムーンライト』ストーリー(ネタバレ含む)

ⅰ.リトル

舞台はアメリカ合衆国マイアミ州。

お世辞にも安全な場所とは言えない街。蔓延る薬物。黒人の街。

この街に住むリトル(ちび)の少年シャロンは、人とは少しだけ違っていた。

少年は、周りから「オカマ」だと馬鹿にされ虐められていた。

まだその意味すらも分かっていないというのに。

しかし、ケヴィンだけは違った。ケヴィンだけは、彼の横に立ち彼を励ました。

シャロンは、家庭環境に深刻な問題を抱えていた。

彼には、家族が母親しかいなかった。たった一人の家族。しかし、母は薬物中毒者だった。

彼は、十分な愛情をもらっているとはとても言えないような環境で、日々を生きていた。

そんな彼の人生に父親のような存在が現れた。フアンという、この街一帯を取り仕切る麻薬組織のボスだ。

フアンは、彼に色々なことを教えた。人生に大事なことを、色々と。

ⅱ.シャロン

シャロンは高校生になっていた。

しかし、彼を取り巻く環境、そして彼自身も変わることはなかった。

相変わらず「オカマ」だと馬鹿にされ、相変わらず母親はヤク中だった。

唯一変わったことと言えば、彼の「父親役」だったフアンがもうこの世にはいないということ。

彼にとって心の支えはケヴィンだけだった。

二人は夜のビーチで、友情とは違う感情をむさぼり合った。

二人にとって忘れられない夜になった。

とある日。シャロンの人生を大きく変える事件が起こる。

虐めの主犯格の少年が、一つのゲームを思い付いた。

それは「親友(ケヴィン)が親友(シャロン)を殴る」というもの。

ケヴィンはいじめられっ子ではなかったが、逆らえなかった。

不良グループが二人を取り囲み、ケヴィンをはやし立てた。

ケヴィンは殴った、シャロンを。

倒れこんだシャロンを袋叩きにする不良たち。彼の顔には大きな傷跡ができていた。

翌日。傷だらけの姿で登校したシャロンは一度も立ち止まることなく教室に入った。

そして、躊躇することなく主犯格の少年を背後から椅子で殴り倒した。

シャロンは連行された。

最後に、ケヴィンと目が合った。

ⅲ.ブラック

アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ。

筋肉の鎧を身に纏った青年の姿があった。彼の名はシャロン。

高級車を乗り回し、金のアクセサリー、金のグリルで自分を武装した青年は、麻薬の売人だった。

かつて自分の母親、家庭環境を崩壊させた麻薬。彼にとって憎むべき対象で、彼は富を築いた。

ある夜、彼に一本の電話が入る。相手はケヴィン。

ずいぶん昔に聞いた懐かしい声だった。彼は今もマイアミにいて料理人として働いてるという。

彼は麻薬販売で手に入れた高級車を走らせ、故郷へと戻る。

ケヴィンはキューバ料理屋で働いていた。

そういえば、フアンはキューバ出身って言ってたっけ。

そんなことを思いながら、料理を口に運ぶ。中々イケてる味だった。

色々あった。この先もきっと、色々ある。

これが人生だ。

その日、二人がさよならを口にすることはなかった。

『ムーンライト』スタッフ&キャスト

『ムーンライト』スタッフ

『ムーンライト』スタッフ
監督バリー・ジェンキンス
製作総指揮ブラット・ピット
脚本バリー・ジェンキンス
撮影ジェームズ・ラクストン
音楽ニコラス・ブリテル

製作総指揮:ブラット・ピット

当時、全くの無名監督&キャストにGOサインを出し、映画を撮らせたブラットピットの「目」。

さすがはハリウッドで長年第一線を張る男。彼は優れた役者としてだけではなく、優れたプロデューサーでもあります。

ブラット・ピットのたしかな審美眼によって『ムーンライト』は文字通りライト(脚光)を浴び、アカデミー賞受賞という映画界最大の栄誉に輝きました。

音楽:ニコラス・ブリテル

『ムーンライト』を語る上で外せないものが「音楽」です。

本作で音楽を担当したニコラス・ブリテルは、ヒップホップの「チョップド・アンド・スクリュード」という手法を映画音楽に持ち込みました。

「チョップド・アンド・スクリュード」は、90年代にアメリカ南部(主にヒューストン)のヒップホップ・シーンで生まれたリミックスの手法で、「極端に曲のピッチを落とした上で、さらに半拍ずらしてミックスする」というもの。

ブリテルは、この手法をオーケストラ音楽に当てはめることで「流動的で、重い低音のスコア(英: a “fluid, bass-heavy score”)」を完成させ、各界から大絶賛を浴びました。


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『ムーンライト』キャスト

『ムーンライト』キャスト
子どもシャロン(リトル)アレックス・ヒバート
思春期シャロン(シャロン)アシュトン・サンダース
大人シャロン(ブラック)トレヴァンテ・ローズ
フアンマハーシャラ・アリ

三人のシャロン

本作は「第一章:リトル」「第二章:シャロン」「第三章:ブラック」の三章仕立ての作品です。

シャロンを演じる役者は、三章でそれぞれ異なります。

外見が全く異なる俳優が演じることでオムニバスチックな短編集的趣もありつつ、しかし、三人のシャロンには、ある部分が共通しています。

それは「目」です。

アレックス・ヒバート、アシュトン・サンダース、トレヴァンテ・ローズ…

三人の目が映し出す、心の内側、雰囲気、そして映し出すライト(光)が同じだからこそ、観客は否応なしに「彼の」人生に入り込んでしまいます。

自我、性、自分の存在意義に各年代で目覚めていく内面を、“同じ瞳”が物語るのだ。「同じフィーリング、同じ雰囲気、同じ要素をもつ俳優を探そうと思った」と、あらゆる手を尽くして、同じ光をたたえた目を持つ3人を探し抜いた。

映画.COM

マハーシャラ・アリ

本作でフアンを演じたマハーシャラ・アリの出演時間はわずか24分という短さでしたが、彼が本作で魅せた演技は絶賛され、見事アカデミー賞助演男優賞に輝きました。

24分という出演時間での受賞は、同部門の過去10年間で最も短いものでした。


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『ムーンライト』感想

この映画に過度な派手さを求めるのはナンセンスです。

ただ淡々と、ただ刻々と、ただ鮮烈に、一人の黒人の人生を描くだけ。ただ、それだけの映画です。

スーパーヒーローは登場しないし、極悪非道な悪役もいない。分かりやすいカタルシスはありません。

彼を取り巻く環境がただ悲惨なだけで、そんな彼を気にもとめることなく、世界は今日も平和です。

本日の天気は晴れ!巨大な隕石が落ちてきて地球が滅亡してしまうかも…なんてことは起こりません!ご安心ください!

分かりやすい話の起伏も、あっと息をのむような山場も、派手なアクションも爆発シーンもない。でも、とても「映画らしい映画」、それが『ムーンライト』という作品です。

映画というのは「誰かの人生と自分の人生を照らし合わすことができる芸術」です。

スクリーンに焼き付いた誰かの人生に、スクリーンを観ている自分の人生を投影することで、人は感動し、興奮し、勇気をもらえます。それが明日を生きる糧になります。

そういった意味で『ムーンライト』は、とても映画らしい映画です。

カメラは終始寄りで、非常に近い位置からシャロンの人生を描きます。彼の真後ろで彼の人生をのぞき見しているかのような至近距離で、僕たちは彼の人生を追体験します。

シャロンがアイデンティティを探す人生の旅路に、自分の人生を重ねずにはいられません。

もちろん僕の母親は薬物依存症ではないし、僕自身も麻薬の売人ではありません。

黒人ではなくアジア人で、(色々問題はあるけど)世界一安全と言われている日本に暮らしています。

シャロンほど壮絶な人生を歩んでいるわけではありません。

それでも彼に共感してしまう。彼の人生を何の感情もなくただ眺めることなんてできない。

人は、誰しも迷います。生きていればこそ、誰でも。迷いのない人生なんて、そんなのあり得ない。

どうせ自分のことなんか誰一人分かってくれやしないんだと、孤独に打ちひしがれる夜もあります。

多かれ少なかれ、シャロンのような気持ちを抱いて生きている人が大勢います。

そんな世界中の一人ぼっちのための、この映画は応援歌です。賛歌ではなく応援歌。

「一人は自分だけじゃない」

「一人だけど、独りじゃない」

『ムーンライト』は、そのことを気づかせてくれる映画です。

ラストで、シャロンの親友ケヴィンは言います。

「これが人生だ」

色々あるし、綺麗ごとばかりではないけど、これが人生だと。

これからも色々あるし、良いことばかりが起こるはずもないけれど、これが人生だと。

「俺も頑張るから、お前も頑張れよ。」

『ムーンライト』から受け取った、たしかなメッセージ。