【映画『ジョーカー』にみる衣装の重要性】服装に込められた男の願望と変貌。 | The Bird's Nest Hair  

【映画『ジョーカー』にみる衣装の重要性】服装に込められた男の願望と変貌。

2019年最大の話題作であり問題作『ジョーカー』が絶賛公開中ですね。

当記事では『ジョーカー』の衣装に焦点を当てていきたいと思います。


*すでに映画を鑑賞した人向けの記事です。

僕は『ジョーカー』の全面支持者で、間違いなく”自分がリアルタイムで観た作品の中で最も素晴らしい1本”です。

それほど多くの映画を観ているわけではありませんが、「趣味は映画を観ることです」と言えるほどには映画を観てきたと自負しています。

「映画を好きでいてよかった」と、そう思わせてくれる大傑作だと思っています。映画ファンにとっての希望の1作です。

『ジョーカー』にみる衣装の重要性

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

①:1981年ニューヨークを忠実に再現

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

『ジョーカー』の舞台は1981年のゴッサムシティです。ゴッサムシティとは言っていますが、どこからどう見ても治安が最悪だったころの1970年代後半から1980年代初頭のニューヨークです。

その当時の服装がリアルに再現されています。

特に主人公のアーサー・フレックが思いを寄せる、隣人ソフィーのファッションが一番顕著ですね。

具体的には、青、茶、海老茶、薄紫、灰色、紺色、カーキが劇中では多用されていいます。

全て靄がかかったようなくすんだ色合いをしていて、これらの色は最近のファッションではメジャーではない色たちですね。

②:アーサー・フレックの服装に込められた願望

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

主人公アーサー・フレックは貧しい暮らしながら、服装や所作にどこか“品”を感じさせるキャラクターです。これは明らかに製作側が意図してやっていることだと思います。

なぜ品を感じるかというと、彼は外出時には襟付きのシャツを着ているんですよね。そしてその上から着古した茶色のウィンドブレーカーを羽織っています。

ファッションに完全に無頓着な人がわざわざシャツを着るでしょうか?着ないですよね。

つまりアーサーは、外見に無頓着なようでいて、じつはそうじゃないということです。そして、外見に気を使うということは、つまり他人の目線を気にしているということです。

どうにかして社会に溶け込みたい、その切なる願望が彼の服装に現れているといえます。

しかし、外見に気を使ってはいるけど、アーサーはおしゃれを知りません。だから彼の服装は、どこかちぐはぐで子供っぽさを感じさせるものになっています。

ちなみに、周囲の目を気にしないでいい自宅のシーンでは、願望、願いの塊を脱ぎ捨てるかのように、上半身裸のシーンが多いですね。

③:憐れな男から狂気の道化師への変貌

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

ジョーカーのこの特徴的な衣装は、「アーサーが長年着古したスーツ」という公式設定があります。(パンフレット参照)

ジョーカー変貌の布石

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

上の写真のシーンは映画の冒頭、ストリートギャングに仕事の看板を盗まれたアーサーが彼らを追いかけるシーンですね。

すでに黄色のベストを着用しています。

そう、始まりから3分間ですでに、「この男にはジョーカーに成り得る要素がありますよ」ということを観客に示しているわけです。

徐々に変貌する様

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

物語が進むにつれてアーサーには、次第にジョーカーの要素が多くなっていきます。

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

顕著なのは、アーサーがスーツを着てコメディクラブの舞台に立つシーンですね。地下鉄で証券マンを銃殺した後のシーンですが、あそこからアーサーとジョーカーの距離が一気に縮まっていきます。

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

ベスト、スーツ、メイク…

ついに、ジョーカーが”完成”します。

大きめのラペル、長めの着丈、ごわついたウールのような厚手の生地、これらの特徴は今の時代の流行りからすれば野暮ったくも見えますが、映画の衣装としてはこの上ない”正解”です。

ジョーカーが、まるで1981年から抜け出てきたかのようなリアルを感じさせます。

なぜか?

キャラクターと衣装が完全にリンクしているからです。

④:ファッションのカラーリングも完璧

「ワインレッドのセットアップスーツ」「イエローのベスト」「ターコイズブルーのシャツ」とても特徴的な色使いですが、ファッションにおけるカラーリングのルールに則っているので、色がきちんと噛み合っています。

     

上の図は「色相環」といいます。

この図における対角線上の色同士は相性が良く、逆に隣り合わせの色同士は相性が良くないというものです。

レッド(スーツ)→ターコイズ(シャツ)→イエロー(ベスト)、相性の良い色・悪い色をサンドイッチすることで色合わせを調節していることが分かります。

あとがき

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

今の僕は、寝ても覚めても『ジョーカー』のことしか考えられないくらいにこの映画に魅了されてしまっているので、ついつい思いつきでこのような記事を書いてしまいました。

映画において「衣装」がこなす役割というのは、僕たちが思っている以上に大きなものですね。

記憶に残る映画の登場人物って、必ずそのキャラの服装も同時にパッと思い浮かびますよね。それは所謂アメコミ映画だけではなくて。

たとえば「バック・トゥー・ザ・フューチャー」の主人公マーティや「トレインスポッティング」のレントンとか…

キャラと衣装が100%噛み合っているというか、衣装を着せられてる感が全くないというか…

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

だからこそ、エレベーターのシーンではじめて正面からジョーカーの全体を観た時には背筋がぞくっとしましたね。

「うわ、ジョーカーだ…」無意識にそうつぶやいてしまいました。