映画『ジョジョ・ラビット』感想・ネタバレ・あらすじ【We can be Heroes】 | The Bird's Nest Hair  
【2020/03/04】New Article Update!

映画『ジョジョ・ラビット』感想・ネタバレ・あらすじ【We can be Heroes】

第92回アカデミー賞にて、「作品賞」「脚色賞」「助演女優賞」「美術賞」「編集賞」「衣裳デザイン賞」の6部門にノミネートされた話題作『ジョジョ・ラビット』を鑑賞しました。

本記事では、『ジョジョ・ラビット』の感想・ネタバレ・あらすじ・予備知識などをまとめています。

Milk

世界を愛で包んだ珠玉の感動作、本当に素晴らしかったです。

『ジョジョ・ラビット』の評価

(C)2019 Twentieth Century Fox

『ジョジョ・ラビット』のレビュー
演出
(5.0)
音楽
(5.0)
ストーリー
(5.0)
キャスト
(5.0)
リピート
(4.0)
総合評価
(4.5)
『ジョジョ・ラビット』の成功と完成は、タイカ・ワイティティという天才でなければ成し得なかった、本作を鑑賞した今、心からそう思います。

監督・脚本、そして主人公ジョジョのイマジナリーフレンドであるアドルフ・ヒトラーまで演じる多才な才能。

一歩間違えれば、(全く笑えない)悪趣味なコメディ映画に陥りかねない物語を、絶妙なバランスで普遍的な感動作に仕立て上げる圧倒的な手腕。

そして、映画出演は本作がはじめてだというローマン・グリフィン・デイヴィスの驚きの演技力と、彼を支えるスカーレット・ヨハンソンやサム・ロックウェルらベテラン勢の安定の名演技。

監督自らが選曲したこだわりの名曲たち(アッと驚きます)、美術、衣装…

全ての要素が隙間なく噛み合った大傑作です。

『ジョジョ・ラビット』スタッフ&キャスト

(C)2019 Twentieth Century Fox

『ジョジョ・ラビット』スタッフ

スタッフ
監督タイカ・ワイティティ
脚本タイカ・ワイティティ
製作タイカ・ワイティティ/カーシュー・ニール/チェルシー・ウィンスタンリー
撮影ミハイ・マライメア・Jr
音楽マイケル・ジアッチーノ

監督・脚本:タイカ・ワイティティ

ニュージーランド出身の天才映画監督、タイカ・ワイティティ。

日本では、『マイティソー・バトルロワイアル』の監督を担当したことで有名です。

本作『ジョジョ・ラビット』では、マオリ系ユダヤ人であり、父親がいない母子家庭だったという監督自身の出自が大きく反映されています。

つまり、主人公のジョジョは、幼き日のタイカ・ワイティティ監督の姿なのかもしれません。

『ジョジョ・ラビット』キャスト

『ジョジョ・ラビット』キャスト
ジョジョ・“ラビット”・ベッツラーローマン・グリフィン・デイヴィス
エルサ・コールトーマシン・マッケンジー
アドルフ・ヒトラータイカ・ワイティティ
クレンツェンドルフ大尉サム・ロックウェル
ロージー・ベッツラースカーレット・ヨハンソン
フロイライン・ラームレベル・ウィルソン
ディエルツ大尉スティーブン・マーチャント

スカーレット・ヨハンソン

本作のロージー・ベッツラー役で、第92回アカデミー賞「助演女優賞」にノミネートされたスカーレット・ヨハンソン。『マリッジ・ストーリー』(2019)の主演女優賞とあわせて“Wノミネート”でも大きな注目を集めています。

強く、気高く、美しい…

幼いジョジョを大きな愛情で抱きしめる、まるで、この世界の正しさの全てを内包したかのような母親を演じたスカーレット・ヨハンソンの「何もしていない感」がとにかくすごいです。

演じているというより、最初から“そういう”人物としてそこに存在していたかのように自然。

本年度最高の助演女優と称されるのも納得の名演技です。

『ジョジョ・ラビット』あらすじ

(C)2019 Twentieth Century Fox

第二次世界大戦下のドイツ。

10歳の少年ジョジョは、彼だけのイマジナリーフレンド(空想上の友達)アドルフ・ヒトラーのアドバイスのもと、立派な青少年ダンヒトラーユーゲントになるために、日々奮闘していた。

「人殺しだって余裕でやれるんだ」

口ではそう言っても、ジョジョは、本当はとても心が優しい少年。

「ウサギを殺せ」という教官の命令に背いてウサギを逃がしてしまい、彼は、“ジョジョ・ラビット”という、不名誉なあだ名をつけられてしまう。

意気消沈で訓練から家に帰るジョジョ。

彼の家族は、母親のロージーだけ。立った二人だけの家族。

母親のロージーは、夫が戦地に出向き、娘(ジョジョの姉)を失ってしまっても、強くたくましく、美しい。

ジョジョのほどけた靴紐を、そっと結び直す母。それを、嬉しそうに見つめるジョジョ。

ある日ジョジョは、隠し部屋に匿われたユダヤ人の少女エルサと出会う。

ナチスとユダヤ…相容れない二人。

母ロージーの目を盗んで、ジョジョとエルサの密会が始まる。

エルサは、聡明で教養がありユーモアに溢れる少女だった。そして、ユダヤ人であることに誇りを持っていた。

彼女は魅力的だった。ジョジョは、そんなエルサに次第に心惹かれていく。

「ユダヤ人は下等種族だ。悪魔だ。」

頭の中の友達 ヒトラーの声が、彼の耳にこだまする。

『ジョジョ・ラビット』ネタバレ

(C)2019 Twentieth Century Fox

※下を開いてネタバレをお読みください。

母と二人で散歩するジョジョの目に飛び込んできた、無数の首吊り死体。

反ナチ運動の活動家は、容赦なく広場で、公衆の面前で絞首刑にされた。見せしめとして。

ジョジョには、彼らが殺さる理由がわからなかった。

秘密警察のディエルツ大尉が、部下を引き連れて、突然、ジョジョの家に家宅捜索に訪れる。

エルサを匿っていることがバレたのか…

もし、彼女の存在を知られれば、殺されてしまう。

ジョジョが必死に策をめぐらせるなか、エルサが秘密警察に堂々と姿を見せる。

彼女はジョジョの無き姉、インゲになりすますことで窮地を脱する。

その場をやり過ごして安堵するジョジョに、悲しい別れが訪れる。

母ロージーが死んだ。

正確には、首をくくられて殺された。

ロージーは、反ナチ運動の活動家だったのだ。

突然の悲しい別れ、信じて疑わなかったナチスの正しさ。

しかし、母親の死とユダヤ人少女との出会いによって、ジョジョは、ナチスが間違っていることに気づく。

そして、エルサへの気持ちにも気づく。

「僕は、彼女を愛している」

「ママがよく言っていた。一番強い力は、愛だ」って。

大戦は集結。ドイツは連合国軍に敗れた。ヒトラーは自殺した。

エルサの身を縛るものは、もう何もない。彼女は自由だ。

ジョジョは、エルサに気持ちを打ち明ける。

そして、彼女を家の外へと連れ出す。

この世の全ての正しさを教えてくれた母親は、もういない。

でも、ジョジョは、きっともう、大丈夫だ。

靴紐だって一人で結べるし、女の子と一緒にダンスだって踊れる。

全てを経験せよ

美も恐怖も

生き続けよ

絶望が最後ではない

ライナー・マリア・リルケ

『ジョジョ・ラビット』を読み解くキーワード

(C)2019 Twentieth Century Fox

①:ヒトラーユーゲント

1926年に正式に設立された、ドイツ ナチス党内の青少年組織。

1936年には国で唯一の青少年団体として、法律によって10〜18歳の青少年の加入が義務付けられた。

目的は、ナチスのイデオロギーを青少年に植え付け、ヒトラーに仕える忠実な少年兵を育成すること。

②:ナチスの焚書

ナチズムの思想から外れているとみなされた書物は、ナチスの手によって焼き払われた。

社会主義者マルクス、ユダヤ人詩人ハイネ、アメリカ人作家ヘミングウェイなど、多くの書物が燃やされた。

③:反ナチ運動

ヒトラーの独裁政権やナチスによる無慈悲な抑圧、非人道的なユダヤ人迫害に抵抗する運動。ジョジョの母も関わっていた。

④:ライナー・マリア・リルケ

プラハ出身のユダヤ系詩人。

エルサが敬愛する作家として劇中に名前が上がる。

⑤:アンネ・フランク

善意の助けによって壁の中で生き延びたエルサのようなユダヤ人が、実際に存在した。

広く知られているのは「アンネの日記」のアンネ・フランク。

ザ・ビートルズとデヴィッド・ボウイ

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オープニングで高らかに鳴り響いた、ザ・ビートルズの名曲「抱きしめたい」に驚いた。

「第二次世界大戦中のドイツが舞台の映画で、なぜ、ビートルズ?」

しかし、本編が進むにつれて、驚きと違和感は、次第に、納得と感動へと変わっていく。

「抱きしめたい」の後にも、トムウェイツの「大人になんかなるものか」ラヴ「エヴリバディズ・ガッタ・リヴ」、そして、本作の主題歌をも担っているデヴィッド・ボウイの名曲「ヒーローズ」など、時代も文脈もまったく異なった、しかし、その時代その時代を彩った、珠玉の名曲たちが流れる。

時代設定や社会的背景を潔く無視したタイカ・ワイティティ監督ならではの確信犯、愉快犯的な選曲の妙。

冒頭の「抱きしめたい」は、「この映画は、こういう感じでやっていきます。こういう映画です」という宣言としての宣言歌だったのだ。

ビートルズの「抱きしめたい」

ビートルズファンには周知の事実だが、そもそもビートルズは、ドイツという国と深い所縁があるバンドだ。

デビュー直前にドイツのハンブルグで行われた2度の巡業や、アストリット・キルヒヘアとの出会いが伝説のバンドを形作ったことは、有名な話だ。

『ジョジョ・ラビット』で使用されている「抱きしめたい」は、ドイツ語バージョンだ。

おなじみのイントロの後に聴こえてくるジョン・レノンとポール・マッカートニーの歌声は、すべてドイツ語だ。

(オリジナル版がリリースされた約1年後の1964年1月に、ツアー先のパリのパテ・マルコーニ・スタジオでレコーディングされたもの)

デヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」

そして、ドイツと縁があるアーティストといえば、本作のラストで流れるデヴィッド・ボウイも同様。使用されている「ヒーローズ」も「抱きしめたい」同様に、ドイツ語バージョンのもの。

(ボウイ自身も出演したウール・エーデル監督「クリスチーネ・F」のためにボーカルを再レコーディングしたもの)

ラストまで来れば、今さら何が流れようとも驚かない。驚きはしないが完全にヤラれた。

「ヒーローズ」をバックにステップを踏むジョジョとエルサの姿に、ザ・フーの名言「」を思い出した人も多いはずだ。

ボウイは、1977年から1979年にかけてドイツのベルリンに移住していた。

彼の半世紀にも及ぶキャリアの中でも、最もクリエティビリティに富んでいたとされる時代。

この間にリリースされた「ロウ」「ヒーローズ」「ロジャー」は、世に『ベルリン三部作』と呼ばている。

60年代のビートルズによってはじまり、70年代のボウイによって終わる『ジョジョ・ラビット』。

偶然にもこの世に存在した、二つの名曲のドイツ語バージョン。

『ジョジョ・ラビット』の成功と完成には、この二つのピースが必要不可欠だったのだ。

『ジョジョ・ラビット』感想

(C)2019 Twentieth Century Fox

①:シビアな世界を彩る、ポップな色使い

ナチス万歳の少年、一番の親友は頭の中にいるアドルフ・ヒトラー、激化する戦争、屋根裏に匿ったユダヤ人少女…

映画のキーワードを並べると途方もないほどシビアな物語のように思える本作を、タイカ・ワイティティ監督は、抜群のセンスと確かな知識に裏付けされたこだわりのアートワークを用いて、ポップな娯楽作品に昇華しています。

10歳の少年から見た世界は、ナチスの非人道的独裁政権のさなかにあっても、その美しさを少しも失ってしなってはいないのです。

当時のドイツ人の暮らしを捉えたモノクロ写真をヒントに、家具や壁紙、小物に至るまで、ポップで楽観的な色使いに大胆アレンジされたの世界。

色調だけみれば、第二次世界大戦のドイツが舞台の映画だとはだれも思わないでしょう。

ホロコーストという人類史上最悪の出来事をテーマにしている本作だけに、幸福感に包まれた美術が観客にもたらす視覚的効果は絶大です。

②:映画に花を添えるロージーのファッション

美術と同様に、本作に登場するファッションもまた、戦争映画「らしくない」のです。

とくに、ジョジョの母親ロージーのカラフルでハイセンスなファッションがとても素晴らしい。

タイカ・ワイティティ監督は、以下のような発言をされています。

『第二次世界大戦をテーマにした映画では、人々は皆、茶色や灰色の洋服に身を包んでいるが、しかし、当時は、明るい色やおしゃれなデザインの洋服がたくさんあった。人々は、今日が人生最後の日になるかもしれないと思い、毎日を生きていた。だから、常に一番良い服を着て、きちんと化粧をしていたんだ。』

ロージーの洗練されたスタイリングが、『ジョジョ・ラビット』の世界を鮮やかに彩っていました。

③:感動のラストシーン

なんといっても、本作はラストシーンが素晴らしい。映画史に残る名シーンと言ってもいいほどです。

美術、衣装、演出、脚本、演技…すべての要素によって導かれた先にある万感のラスト。

ジョジョの物語の「本当の始まり」を是非、その目で確かめて下さい。

あとがき

(C)2019 Twentieth Century Fox

『ロックンロールは、別に俺たちを苦悩から解放してもくれないし、逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま踊らせるのだ』

映画館を後にする僕の頭の中に真っ先に浮かんだのは、ザ・フーのピート・タウンゼントの名言でした。

悲惨な歴史は変えられない。失ったものはもう戻ってこない。逃げられない。

だから、踊ろう。今だけは、君と二人で。

Milk

とびきりロマンチックなラストシーンに、涙が止まりませんでした