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『ハクソー・リッジ』の評価
(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
『ハクソー・リッジ』スタッフ&キャスト
(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
『ハクソー・リッジ』スタッフ
『ハクソー・リッジ』スタッフ | |
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監督 | メル・ギブソン |
編集 | ジョン・ギルバート |
撮影 | サイモン・ダガン |
音楽 | ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ |
監督:メル・ギブソン
『マッドマックス』『リーサルウェポン』シリーズで確立したスーパースター俳優としての地位はもちろんだが、メル・ギブソンと言えばはやり映画監督・映画作家として、非常に高い評価を得ていることは周知の事実。とくに、同業者からの評価は異常なまでに高く、彼のファンを名乗る映画人は枚挙に暇がない。
全作『アポカリプト』からおよそ10年ぶり、全世界で待ち望まれていた言葉通り待望の新作『ハクソー・リッジ』は、彼のフィルモグラフィの中でも非常に高い評価と称賛を得た。
『ハクソー・リッジ』キャスト
『ハクソー・リッジ』キャスト | |
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デズモンド・ドス | アンドリュー・ガーフィールド |
ハウエル・軍曹 | ヴィンス・ヴォーン |
ジャック・グローヴァー大尉 | サム・ワーシントン |
トーマス・ドス | ヒューゴ・ウィーヴィング |
ドロシー・シュッテ | テリーサ・パーマー |
アンドリュー・ガーフィールド
『アメイジングスパイダーマン』でお馴染みのアンドリュー・ガーフィールド。本作の演技でアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされた。
少し頼りないが、しかしどこまでも無垢な若者を演じた前半部分と、後半部分の圧倒的ヒーロー感の対比、演技の緩急が本当に素晴らしい。
『ハクソー・リッジ』概要・あらすじ
(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
メル・ギブソンが「アポカリプト」以来10年ぶりにメガホンをとり、第2次世界大戦の沖縄戦で75人の命を救った米軍衛生兵デズモンド・ドスの実話を映画化した戦争ドラマ。人を殺してはならないという宗教的信念を持つデズモンドは、軍隊でもその意志を貫こうとして上官や同僚たちから疎まれ、ついには軍法会議にかけられることに。妻や父に助けられ、武器を持たずに戦場へ行くことを許可された彼は、激戦地・沖縄の断崖絶壁(ハクソー・リッジ)での戦闘に衛生兵として参加。敵兵たちの捨て身の攻撃に味方は一時撤退を余儀なくされるが、負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、たったひとりで戦場に留まり、敵味方の分け隔てなく治療を施していく。「沈黙 サイレンス」「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが主演を務め、「アバター」のサム・ワーシントン、「X-ミッション」のルーク・ブレイシーらが共演。第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門でノミネートされ、編集賞と録音賞の2部門を受賞した。
https://eiga.com/movie/85972/
『ハクソー・リッジ』感想
(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
王道のストーリー
まずもって本作『ハクソー・リッジ』は、メルギブソン最も分かりやすい作品だ。
本作は大きく前篇・後篇に分けられる。非常に分かりやすい形で真っ二つに分かれているので、観ていて安心とうか一切ストレスなく鑑賞できる。
前半部分では、主人公がなぜ「不殺の誓い」を立てるようになったのかという主人公のバックボーン、そして、愛する女性との出会いが描かれている。続いて前半の終わりでは「不殺の誓い」を貫くことがいかに困難か、その事実が描かれている。
軍に入隊したはいいが、「不殺の誓い」を立てているドスは銃を持つことができない。当然、そのことでドスは周囲からは反発を買う。隊長からは除隊を命じられる。しかし、ドスは自分の信念を曲げることはせず、ついには、銃を持たずに戦場に行くことを正式に認められる。この間およそ30分。さらに言えば、仲間や上司のキャラ紹介、ドスの信念の強さまで描かれていて、そのことが無理なく観客の頭に浸透する作りになっている。
そして、後半。ここはもちろん、ハクソー・リッジ、すなわち、沖縄「前田高地」で繰り広げられた壮絶な地上戦が描かれる。作品の見せ場である。
圧巻の戦闘シーン
そして、この戦闘シーンがちょっと尋常じゃなくスゴイ。「メル・ギブソンだからこれぐらいはやるだろう」というこちらの期待をはるかに飛び越える圧巻の出来栄え。戦争映画の歴史を間違いなく更新している。
名作と称されるこれまでの戦争映画の良いところだけを、掛け合わせ、濃縮し、詰め込み、再構築した、王道でありながらも新鮮さをも感じさせる圧倒的な戦闘シーン。とにかくスゴイとしか言いようがない。
トーチカ攻略、スナイパー戦、さらに、メタルギアソリッドよろしく敵の陣地に入り込み暗躍するステルスシーンまであり、本当に様々な要素が高純度で矛盾なく合わさっている。スゴイとしか言いようがない。
史実に基づいた作品
そういった映画的な娯楽要素もありつつ、本作はやはり史実を基にした作品なので、エンターテインメントとしての面白さはもちろん、やはり、一日本人として多いに考えさせられるというか、今ある平和が当たり前ではないことを強く噛みしめる。
まず、激戦の舞台となっている「前田高地」の地形は、、実際の地形を非常に忠実に再現されている。(詳しくは、浦添市のHPをご覧下さい→https://www.city.urasoe.lg.jp/docs/2017052900033/)
さらに、先に挙げた様々な作戦、そして、ウルトラバイオレンス・ウルトラゴア描写も史実に記されているもので、忠実。そして、部隊が日本、主人公達の敵が日本兵なのでちょっと他人事として観れないというか、もちろん映画的な面白さもあるが、これまでの戦争映画の戦闘シーン、すなわち「自分とは関係のない知らない世界の出来事」として観ることはできない。(日本兵が悪く描かれている描写はないので、その点は安心して観てください。)
映画としての面白さと芸術としての問いかけが完璧なバランスで成り立っている。
なぜ、『ハクソー・リッジ』に心を揺さぶられるのか
『ハクソー・リッジ』が名作である所以は、観ている者の心を強く揺さぶるからだ。
ではなぜ、強く揺さぶらるのか…
戦闘シーンが素晴らしいからか、構成が見事だからか、キャラクターが魅力的だからか…もちろんそれらもある。が、なぜ『ハクソー・リッジ』がこれほどまでに心に刺さるかと言われれば一番の要素はやはり、人間が持つ、人間だけが持つ、信念、意地、意志、不屈の精神はときに、普通を普遍を常識を現実を世界を変えることができるという強烈なメッセージ。ここにあると思う。
良心的兵役拒否者として銃を持たずに戦場を駆けたデズモンド・T・ドスは、衛生兵として多くの人の命を救った。彼は不屈の信念で奇跡をおこした。常識を変えた。
そのたったひとつの事実が、どうしようもなく心を打つ。
そのたったひとつの事実を、名匠メル・ギブソンがドラマチックに彩る。心に刺さらないわけがない。