巨匠マーティン・スコセッシ監督作品の中でも、史上最高傑作との呼び声も高い歴史的名作『グッドフェローズ』。
従来のギャング映画のあり方、スタイルを根底からひっくり返した革新的スタイルは、後の映画作品や監督たちに多大な影響を与えました。
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本記事では、『グッドフェローズ』の見どころや感想をネタバレありでご紹介します。
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『グッドフェローズ』の評価
(C)2009 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
この映画には魔法が込められています。
それは、何度でも観てしまうという魔法です。
すでに鑑賞した方になら、この意味がきっと伝わると思います。
2時間半近くありますが、いつも時間が一瞬で過ぎ去ってしまいます。
『グッドフェローズ』あらすじ
Warner Bros. Pictures / Photofest / Zeta Image
「ガキの頃からギャングになりたかった。大統領よりもギャングが憧れだった」――。
この物語の主人公ヘンリー・ヒルは、まるで普通の少年がスポーツ選手や宇宙飛行士を目指すよう極々自然に、ギャングの世界に憧れた。
11歳という幼さでニューヨーク・ブルックリンを束ねるマフィアの仲間入りを果たし、身も心もどっぷりと裏社会に浸ることになる。
息を吸うように暴力をふるい、最愛の妻と子どもをおいて酒と女に溺れる日々。
ジミーとトミーという仲間(グッドフェローズ)にも恵まれた。
この世の贅だけを浴びるような生活を送っていたヘンリーだが、“ある事件”をきっかけに、彼の人生の歯車は音を立てて崩れていく…。
全米史上最大の強奪事件ともいわれる現金強奪事件(ルフハンザ航空現金強奪事件)の主犯格として、600万ドルという破格の大金を手に入れたヘンリーは人生の絶頂を味わっていた。
しかし、1人の仲間の失敗により仲間の絆はもろくも崩れ去ることになる…。足が付くことを恐れたジミーが、関わった者たちを口封じのために次々と殺害してまわったのだ。
それとほぼ時を同じくして、ヘンリーの重大な秘密が発覚してしまった。彼は組織の中でタブーとされていた麻薬に手を出していたのだ。(それも常習犯として)
わずか3,000ドルというはした金で、組織を破門されてしたまった彼を守るものはもう誰もいない…。
「かつての仲間に自分も殺されるかもしれない」という恐怖に怯えるヘンリーは、“ある決断”を下す。
『グッドフェローズ』個人的なあれこれ
Warner Bros. Pictures / Photofest / Zeta Image
まず、前提として『グッドフェローズ』という作品は、実在したギャングスター ヘンリー・ヒル(1943~2012)という人物の人生を基にして描かれた2時間25分です。
この荒唐無稽な物語のおよそ9割がノンフィクションだというのだから、驚きです。
金字塔『ゴッドファーザー』の存在
ギャング映画と言えば、やはり広く想像されるのは『ゴッドファーザー』のイメージではないでしょうか?
ニューヨークのシチリア系マフィア一家の因縁や親子の葛藤が描かれた『ゴッドファーザー』は、言わずもがなギャング映画の金字塔であり、四の五の言わせない力強さを持った大名作です。
幾重にも重なった人々の思惑と願い、血で血を洗う暴力的な世界はとても壮大で、まるでクラシック・オーケストラのような華やかさがあります。
そして、『ゴッドファーザー』は、たとえフィクションではあっても現実世界に通じる確かなリアリティがあります。
そう、『ゴッドファーザー』には“物語”が存在します。
対して『グッドフェローズ』には?
何もないのです。この作品には分かりやすい起承転結も、大きな見せ場もド派手なアクションシーンも、何一つありません。
ヘンリー・ヒルという一人の男と、彼とともに生きる人々のその場限りの“断片的な人生が、ポツポツと描かれているに過ぎないのです。
淡々と流れる男の日常(一般的には非日常)は、つまりドキュメンタリーです。
「『グッドフェローズ』は、ともかく精神はドキュメンタリーだ。16ミリキャメラで、こういう連中を20年から25年追い続けたらできあがるようなものとでも言えばいいだろうか」
―マーティン・スコセッシ―
ロックのようなギャング映画『グッドフェローズ』
一人の男の人生を“何事もないかのように”描いているだけなのに、面白い。とにかく面白いのです。
『ゴッドファーザー』が荘厳なクラシックだとするなら、『グッドフェローズ』はロックンロールのようにシンプルな作品だといえます。
とにかくシンプルだし分かりやすい。開始3分で「この映画ヤバい!」とノックアウトされてしまう感覚は、ロックを聴いた瞬間の「この曲ヤバい!」の感覚と同じです。
『ゴッドファーザー』が築き上げたギャング映画の様式美に、真っ向から中指を突き立て壊して見せた作品が『グッドフェローズ』だと、僕は思っています。
そして、権威に挑むその姿勢こそ“ロック・スピリッツ”こそ、まさしくロックと言えるのではないでしょうか?
(僕は『ゴッドファーザー』も大好きです)
『グッドフェローズ』5つの見どころ
Warner Bros. Pictures / Photofest / Zeta Image
①:ワンカット長回しの名シーン
マーティン・スコセッシは、ワンカット長回しのテクニックを駆使することでも知られている監督です。
長回し(ながまわし)は、カットせずに長い間カメラを回し続ける映画の技法。
カットせずにカメラを回し続けることにより、役者の緊張感や映像の臨場感を維持し続けることができるという効果がある。
本作には“最高の3分間”と称される長回しのシーンがあります。個人的にもスコセッシの長回しのシーンの中でも最も好きなワンシーンです。
ヘンリーと妻(当時はまだ恋人)のカレンが行きつけのレストランに到着。入り口には長蛇の列。それを見たヘンリーはカレンの手を引きレストラン脇の従業員入り口へと足早に歩く。扉のそばにいた従業員にチップ(賄賂)を渡し二人はレストランの中へ。扉の中では従業員たちが所狭しと駆けずり回っている。従業員通路や厨房、一般客は目にすることすらないレストランの“裏側”を堂々と進むヘンリーとカレン。やがて、二人はレストランの裏側を抜けて”表側”の客席へ。2人のために用意された特等席で華やかなショーを楽しむ。
と、この間に起こった全てがワンカットなのです。
このワンカットは、そのままヘンリーの生きざまを表しています。
陽の光が当たらない、社会の“”裏側”でならず者として生きる男の生きざまです。
ワンシーンで観客の心をつかんで離さない、登場人物の人生を考えずにはいられない、これこそ映画です。
②:ロバート・デニーロの名演技
やはり、ロバート・デニーロです。
「ロバート・デニーロ、圧倒的演技力の意。」
みたいな感じで、もはや辞書に載っていいと思います。
本作でもデニーロの演技力が爆発しています。
無表情で人の顔面を踏みつける残忍さ、死にかけの相手に躊躇なく刃物を突き立て銃弾で打ち抜く容赦のなさ…
表側で生きている観客が想像もできない非日常な出来事、人物を「恐い」と思わせてしまう説得力とリアリティ。
しかも派手な演技やアクションは一切なく、ほぼ表情と目の動きだけで魅せてしまうのだから、本当に恐ろしいのはロバート・デニーロ自身だという話。
特にクライマックスのシーン、老眼鏡をかけてヘンリーと一対一で向い合うシーンは、鳥肌モノというか額に嫌な汗をかいてしまうほどの恐ろしさを感じてしまいます。
ただ、老眼鏡をかけているだけなのに、得体の知れない圧と底知れね恐怖…。老眼鏡かけてこんな迫力出せるのは間違いなくデニーロだけでしょう。
③:作品を彩る名曲たち
ポップミュージックの歴史を作ってきた名曲が2時間半、ほぼノンストップで流れ続ける贅沢さは映画ならではです。
映画の中で流れる既成曲はほとんどの場合、時代背景を指し示す役割を担っています。しかし、本作はそんな定石知ったことではありません。
まるでスコセッシ自身が「ほら、この曲カッコイイだろ。これも最高でしょ?次はこの曲流すよ。これも良いから聴いてみてね」と語りかけてくれているかのように、自由。
マーティン・スコセッシという世界的映画監督の私性や趣味が浮き彫りになる選曲は、作り手と受け手をつなぐバトンでもあります。
④:映像と音楽の化学反応
現在では「既成曲を作品の中に組み込む映画」の存在は、特別珍しいものではありません。
しかし『グッドフェローズ』ほど、映像と音楽の相乗効果がもたらす“魔法”で、こちらの脳内をダイレクトに揺さぶり胸をかき乱すほどの感情を燃焼させてしまう例は、存在しないといってもいいでしょう。
特に、後半部の「映画史上最も美しい殺人シーン」。
デレク&ザ・ドミノス(エリック・クラプトンが在籍したバンド)の名曲「いとしのレイラ」(1970)が流れるシーンは、もう…
控えめに言っても映画史上の伝説です。
⑤:最後の最後まで最高
仲間を売ってまで無様に生き抜くことを決めたヘンリー。
―まともな稼業はアホだ。
つまらない仕事でケチな金をもらう、そんなのはタマもついてねぇ腑抜けだ。
クソ喰らえだ
死んだも同然だ。―
かつての自分が見下していた“アホ”として生きることを決めた、ヘンリーのマイ・ウェイ。
この上なく滑稽でダサい男の背中が映るラストシーンに流れる、シド・ヴィシャスの「 マイ・ウェイ」(78)
最高以外の言葉がないよ、スコセッシ。
あとがき
Warner Bros. Pictures / Photofest / Zeta Image
巨匠マーティン・スコセッシの作品の中でも、「最高傑作」と呼ばれる『グッドフェローズ』。
映画ファンであれば、間違いなく観て損はない名作です。
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マーティン・スコセッシ最新作について
マーティン・スコセッシ監督待望の最新作『アイリッシュマン』が、いよいよ11月15日から期間限定公開(その後はNetflixにて配信)されます。
詳しくは下記記事にまとめているので、スコセッシファン、映画ファンの方は是非チェックしてみてください。
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