『アースクエイクバード』感想・解説・ネタバレ【日本を一番、リアルに描いた海外映画】 | The Bird's Nest Hair  
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『アースクエイクバード』感想・解説・ネタバレ【日本を一番、リアルに描いた海外映画】

Netflixオリジナル映画『アースクエイクバード』を視聴しました。

本記事では、『アースクエイクバード』のあらすじ・感想・ネタバレをお伝えします。

主演のアリシア・ヴィキャンデルドの演技がいかに素晴らしいものであるかは分かっていましたが、綺麗な日本語を全編通して話している姿にはとても驚きました。

一瞬ちらっと喋るとかではなく、全編ほぼ日本語。

アカデミー女優の美しい日本語演技を堪能できる。

これだけでも本作品を観る価値は十分にあるでしょう。

(音声は必ず「英語:オリジナル」に設定してい下さい)

そしてなんといっても、三代目 J SOUL BROTHERSの小林直己の存在。

本作でハリウッドデビューを果たしたわけですが、すでに海外の批評家たちからも絶賛の評価。

彼なしではこの映画は成り立たないほどに、それほどに圧倒的な存在感を見せつけています。

「替えが効かない存在感」を、存分に放っていました。

『アースクエイクバード』あらすじ

日本に来てまだ間もない若いアメリカ人女性リリーが、何者かに殺害された。

日本の翻訳会社に勤めるルーシーは彼女と友人関係にあったことから、重要参考人にとして警察に連行され取り調べを受ける。

彼女を疑う警察。リリーと最後に合った人物はルーシーだったのだ…。

ルーシーは、彼女自身とリリーとの関係、そして、彼女とリリーと一人の男、禎司の三人の関係について語り始める。


ある日のこと。

シャッターを切り、道行くルーシーをフィルムに収めた日本人の青年、禎司。

不意に撮られたことに少しの怒りを感じたルーシーは、語気を強めて彼に詰め寄る。

「撮るなら、お願いするのが常識でしょ。」

彼女は、流暢な日本語でそういった。

これが、ルーシーと禎司の出会いだった。

ルーシーは禎司のミステリアスな雰囲気に魅力を感じ、禎司はルーシーを被写体として魅力を感じ、そして彼女を撮りたがった。

彼女たちは互いに惹かれ合い、二人はいつしか“そういう関係”になった。

禎司との甘いひと時に幸せを感じていたルーシーだったが、その幸せはそう長くは続かなかった。

ある日、ルーシーは外国人の友人から、リリーという女性を紹介された。

彼女は日本に住み始めてまだ3週間で、誰かの助けを必要としていた。

嫌々だったルーシーも徐々に彼女に心を許し、いつしか二人の間には友情が芽生えていた。

リリーは、ルーシーの恋人である禎司に会いたがった。

禎司とリリーが出会ってしまうことに少しの不安があったルーシーだったが、リリーの熱意に根負けした形で、三人は佐渡島に小旅行に行くことになる。

その旅行は、ルーシーにとって楽しいものではなかった。

ルーシーの不安は当たってしまった。

禎司とリリー、二人は意気投合。具合が悪くなり寝込んだルーシーを置き去りにして、二人は観光を楽しんだ。

ルーシーはひどく傷ついた。

恋も友情もひどく薄っぺらなものに感じた。

旅行から帰り部屋に閉じこもる日々が続いた。まるで、世間から自分の存在を消すかのように。

そして、あの日。

土砂降りの雨の中、ルーシーの家に訪れるリリーの姿があった…。

そこで、ルーシーがとった行動とは…

『アースクエイクバード』スタッフ&キャスト

『アースクエイクバード』スタッフ

『アースクエイクバード』スタッフ
監督ウォッシュ・ウエストモアランド
製作総指揮リドリー・スコット
原作スザンナ・ジョーンズ
脚本ウォッシュ・ウエストモアランド
撮影チョン・ジョンフン
美術種田陽平
衣装小川久美子

リドリー・スコットが製作総指揮として関わっています。

リドリー・スコットの作品といえば、松田優作出演、そして大阪を舞台にした映画『ブラック・レイン』は、絶対に外せません。僕たちに日本人にとって特別な一本です。

監督を務めるウォッシュ・ウエストモアランドは、2015年公開の『アリスのままで』が大きな話題を呼んだことも記憶に新しい、イギリス人映画監督です。

さらに原作のスザンナ・ジョーンズも同じくイギリス人で、日本に在住していた経験もあります。本作には彼女の実体験も大きく反映されています。

そして、美術監督の種田陽平氏。

彼は、1996年公開の岩井俊二監督作『スワロウテイル』でも美術監督を務め、あのクエンティン・タランティーノの作品にも度々起用されている、国内外問わず高い評価を得ている日本人美術監督です。

『アースクエイクバード』キャスト

『アースクエイクバード』キャスト
ルーシーアリシア・ヴィキャンデルド
リリーライリー・キーオ
禎司小林直己

アリシア・ヴィキャンデルド

2015年公開『リリーのすべて』でアカデミー賞助演女優賞に輝き一躍世界的トップスターに躍り出た、スウェーデン出身のアリシア・ヴィキャンデルド。

美しい顔立ちと少女のようなイノセントで純粋無垢な雰囲気をもつ彼女は、本作でもやはりずば抜けた演技と圧倒的なオーラを見せつけてくれました。

80年代日本において、今よりもなお「異物」な存在であった外国人を見事に演じていました。

そしてなんといっても、彼女の口から出てくる美しい日本語。

これには日本人映画ファンは間違いなく大感激でしょう。

小林直己

本作を語る上で外せないのが、小林直己の存在です。

アカデミー女優アリシア・ヴィキャンデルドに一歩も引けを取らない圧倒的な存在感で、常に画面を占領しようとする小林直己。

本作は、小林直己とアリシア・ヴィキャンデルド、二人の綱引きのような、あるいは二人三脚のような…拮抗した二つの大きな存在で成り立っていると言えます。

禎司を演じることは、彼以外では不可能だった。彼以外ありえなかった。

そう思わせる、有無を言わせない圧倒的存在感です。

『アースクエイクバード』感想・考察

リアルな「日本」描写

『アースクエイクバード』でまず驚いたのが、「日本」のリアルな描写。

「洋画だが、邦画。」

そう言っていいほどに、「日本」がとにかくリアルに描かれています。

外国人と話しをしていると感じることですが、正直、彼らにとって日本・中国・韓国・台湾はどれも似た国であり、明確な違いはありません。

確かに日本に対して、「ハイテクノロジー」「富士山」「アニメ」「漫画」「ゲーム」のような断片的なイメージはあれど、日本人の服装、住環境、食事などの日常や生活、風景、習慣を具体的に想像できる外国人は決して多くはないでしょう。

それは、多くの日本人が外国のことをよく知らないことと、全くのイコールです。

「日本」が扱われたハリウッド映画を観たとき、「いや、これ中国じゃん」そう思った経験はありませんか?

ハリウッド作品において「日本」が描かれる場合、大抵は外国人が空想するステレオタイプ的な「日本(ジャパン)」であったり、中国と混同されていたりと、「日本」をリアルに描写した海外映画は決して多くはありません。

しかし『アースクエイクバード』は違います。

日本人スタッフを多く参加させることで、どこまでもリアルに「日本」を描いています。

熱気と湿気(80年代の日本)

海外に行けば肌で感じることですが、日本はとにかく湿気が高い「湿気大国」です。

四方を海に囲まれた小さな島国に溢れんばかりの人々が生活をしている、世界的にも類のない経済大国(しかも本作品の舞台は1989年のバブル絶頂期)です。

日本を包み込む巨大な熱気と湿気。

登場人物が「暑い」と口にしたり、汗をかくという直接的な描写はありませんが、画面を包みこむムンとした熱気と湿気が確かにあります。

劇中で流れる音楽や登場人物のファッションが、しっかりと80年代的であるところも見どころです。

「東京」に「近鉄電車」

全編通して日本でロケを行ったという本作は、たしかに日本のリアルが描かれた作品でした。

しかし、それ故にどうしても気になってしまった点が1箇所ありました。(細かい箇所かもしれませんが)

佐渡島の小旅行から東京に帰ってきた三人は、駅でそれぞれ別れをつげることになります

しかし、実際にはルーシーだけが一人になり、禎司とリリーが二人でいるところを彼女が目撃してしまうというシーンがあります。

ルーシーが決定的に傷つくことになってしまう、映画の中でもかなり重要なシーンです。

この場面、三人が“一旦”別れるシーンは確かに東京です。

「八重洲」の表札があることから、「東京駅」という設定でしょう。

しかし、ホームを降りたルーシーの背に走る電車が完全に「近鉄電車」なのです。

近畿日本鉄道株式会社(きんきにっぽんてつどう、英: Kintetsu Railway Co., Ltd.)は、大阪府・奈良県・京都府・三重県・愛知県の2府3県[注釈 1]にまたがる営業路線網を持つ大手私鉄である。

Wikipedia

僕は大阪在住で日常的に近鉄電車を利用するので間違いありませんが、100%近鉄電車です。

後ろの表札をよく見ると、「近鉄名古屋駅」「近鉄パッセ」の文字が確認できます。

つまりロケ地は、「近鉄名古屋駅」で間違いありません。

日本のリアルを丁寧に描いた作品だからこそ、このワンシーンにはとても違和感を感じてしまいました。

「うわ、近鉄電車じゃん、東京なのに。」が先行してしまい、重要なシーンになのに作品に乗り切れない自分がいます。

集中できないままにシーンは終わり、電車は出発。僕は、乗り遅れてしまいました。

初見だと僕のように面喰らう方もいると思うので、ここでお伝えしておきます。

設定が「東京」でも「近鉄電車」が登場します。

ルーシーとリリーの対比

本作に登場する主要な女性人物は主人公ルーシーと、その友人であり恋敵にもなるリリーです。

アリシア・ヴィキャンデルド演じるルーシーは、本音と建前を使い分け、相手のために自分の感情を押し殺す奥ゆかしさをもった、非常に「日本人的」な女性として描かれています。

それは、心情だけではなく、所作や箸の使い方、服装、メイク、あらゆる要所・要素を使って描かれています。

一方リリーは、ルーシーとは対照的に自分の意見をはっきりと発言し、自分の願望(恋愛)にも積極的、非常にオープンな性格の持ち主です。

日本人の感覚では躊躇してしまうようなこともサッと行動に移せてしまう、日本人が憧れる「欧米的」な格好良さを持っています。

ルーシーとリリーという二人の女性を通して、「日本人から見た外国人」「外国人から見た日本人」の違いを見事に表現しています。

非日本人でありながら、どこまでも日本人らしい女性を表現しているアリシア・ヴィキャンデルドの演技力には、ただただ脱帽するしかありません。

『アースクエイクバード』ネタバレ

*ここからは大きくネタバレを経由した感想になります。

映画の結末から言うと、ルーシーはリリーを殺してはいません。彼女は無実です。

では、失踪したリリーはどこに行ったのか…

いや、誰に殺されたのか…

答えは一人しかいません。

禎司です。

彼が本当に撮りたいもの、それは「生と死の狭間でもがき苦しむ人間の姿」だったのです。

自分が(を)一時愛した女性の「命が燃えつきる瞬間」をフィルムに収めるためなら彼は、躊躇することなく相手の命のシャッターを切ります。

警察から解放され、リリーを殺した犯人だと知ったルーシーは、“証拠写真”を握りしめて自宅へと帰ります。

ルーシーを待っていた人物、それは…

禎司です。

ルーシーは、自己防衛から禎司を殺してしまいます。

リリーは死んでしまった、禎司も。

自分と関わることで人が死んでしまう。

ルーシーは罪悪感に苦しみます。

そんなルーシーを救ったのは、(彼女と同じように)自分の行為が結果的に相手の命を奪ってしまい、罪悪感に苦しんでいる一人の女性の姿でした。

映画の最後、ルーシーはそんな彼女の姿を見て、言葉を聞いて、何かを決心したような、少し微笑んでいるような、そんな表情を見せます。

直接的には、ルーシーは何ひとつ救われてはいないのかもしれません。

彼女の傷が癒えることはないでしょう。今後も罪悪感は残り続けます、きっと。

しかし、

「一人じゃない」

そう感じたとき、人は真に安心する生き物です。

自分と同じような女性が、自分以外にも存在する。

そのことにルーシーは、確かに救われたのです。

『アースクエイクバード』を観た人の感想

アリシア・ヴィキャンデルの日本語演技と小林直己の存在感が、やはりの映画の心臓ですね。

絶賛が8割ほどでした。

あとがき

日本の風景や景色だけではなく、日常、生活、そして、日本人という単一民族を、ここまで見事にリアルに描き切った海外映画は『アースクエイクバード』以外に、存在しないでしょう。

『アースクエイクバード』という作品は、謎解きを楽しむミステリーとしてではなく、(犯人が分かり切っているし)、「日本人から見た外国人」「外国人から見た日本人」という二つの視点を通して、一人の女性が抱える闇が徐々に光に照らされていくヒューマンドラマとして鑑賞するのがおすすめです。

近鉄電車のシーンなどの細かい点、ブラッシュアップすべき点が全くないわけではありませんが、全編通して映像もとても美しく、なによりアリシア・ヴィキャンデルドの卓越した演技力と美しい日本語を堪能できるという点で、観る価値ありの作品です。

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