『チェンソーマン』あらすじ・登場人物・読みどころ解説【その男、チェンソーにつき】 | The Bird's Nest Hair  
【12/05】最新記事を更新

『チェンソーマン』あらすじ・登場人物・読みどころ解説【その男、チェンソーにつき】

2019年1月号の週刊少年ジャンプに載った1本の新連載作品に、日本中のジャンプファンが驚愕し、そして同時に、拳を突き上げたはずです。

「やるじゃん、ジャンプ!」と。

FT

「これはすごい作品だ…。間違いなく数年に1本出るかでないかの傑作。長年ジャンプを読み続けているが、うむ、ここまで衝撃的な新連載に出会ったのは初めてだ…。」

ジャンプ歴20年近くになる「自称:ジャンプ研究家」の僕も、興奮を抑えきれない一人でした。

2019年最大、令和最初のジャンプ傑作作品の名前は『チェンソーマン』。

僕はすっかり『チェンソーマン』の虜。

『チェンソーマン』マニアです。

本記事では今後、一般的にも大きな話題になる(おそらくアニメ化もされる)『』の魅力をご紹介します。

『チェンソーマン』あらすじ

「悪魔」と呼ばれる存在が世界に、日常に、当たり前に蔓延る世界。

この物語の主人公「デンジ」と、彼の相棒でチェンソーの悪魔「ポチタ」は、悪魔を駆除する職業「デビルハンター」を生業にしてその日暮らしの極貧暮らしをおくっていた。

デンジには父親が遺した莫大な借金があった。父親の借金を肩代わりし、ヤクザに利用される日々。

デンジには「ほしいもの」があたった。それは普通の日々、暮らし、生活。

食パンにジャムを塗って食べること、部屋でゲームをすること、女性と付き合うこと…ただ、それだけ。

しかし、デンジには決して叶えられない「ほしいもの」。

なぜなら彼は、この夢を語ったほんの数ページ後に死ぬことになるから。

ある日、ヤクザたちに廃墟に呼び出されたデンジは、暗闇の中で腹を刺され、身体を切り刻まれ(当然)絶命してしまう。

デンジが殺された理由は簡単。「お前(デンジ)は、もう用済み。俺たちは悪魔と契約して力を手に入れたから」だ。

遠のく意識の中、相棒ポチタの身を案じるデンジ。

「おれの身体を乗っ取って、お前だけでも普通に生きてくれ」

しかし、ここでも彼の望みが叶うことはない。

ポチタは自分に残された最後の力を使って、デンジをこの世に蘇らせる。

切り刻まれた身体は一つになり、この世に復活したデンジに残されたものはただ一つ。相棒ポチタのチェンソーの能力。

今は亡き相棒ポチタの力を使い『チェンソーマン』の姿に変身したデンジは、悪魔に心を売ったヤクザたちを文字通り「一掃」する。

一足遅く現場に駆け付けた公安のデビルハンターが目にしたものは、惨状ともいうべき現場。

血だまりの中「一人」立ちすくむデンジ。

彼は、デビルハンターであるマキマから二つの選択を提示される。

1.悪魔として私に殺されるか

2.人として私に飼われるか(バタージャムを塗った食パン、サラダ、コーヒー付き)

デンジに迷う余地はなかった。

彼の、公安デビルハンターとしての生活が始まる。

『チェンソーマン』登場人物

デンジ

本作の主人公。一人称は「俺」。年齢は16歳。

父の借金を背負わされ、デビルハンターとして悪魔を討伐し金を稼ぎ、自身の眼球や臓器を売っても尚、生きるのがやっとな極貧どん底生活を送っていた。

幼いころ(父親が死んだ直後)に瀕死の悪魔ポチタと血の契約を交わして以来、二人は相棒に。二人で一つとしてヤクザ専属のデビルハンターとして活動する。

悪魔に魂を売ったヤクザの手によって一度は完全に死に至るが、相棒ポチタの力によって蘇生する。

ポチタが心臓となったことで、チェンソーの悪魔へと変身する『チェンソーマン』の能力を得た。

公安のデビルハンター、マキマに拾われて公安所属のデビルハンターになる。

自分の欲望や思ったことには正直に生きるタイプ。思ったことをすぐ口にする。

これまで人と関わってきた経験がないため、協調性はゼロ。

幼いころから自分の身は自分で守ってきたため、恐いもの知らずでどんな敵にも(後先考えずに)突っ込む。

ポチタ

愛くるしい姿をしたチェンソーの悪魔。お尻からチェンソーが突き出たような見た目をしている。

デンジが幼いころからいつも一緒にいた。

デンジがヤクザに殺害された際に、自分の命と力を引き換えにデンジを蘇生させる。

マキマさん

デンジの直属の上司。内閣官房長官直属のデビルハンター。

ミステリアスな雰囲気を醸し出す若くて綺麗な女性だが、驚異的な力を誇る、はっきり言って最強。

生贄に対象者の名前を発言させることで、たとえ対象者がどれだけ遠くにいようとも瞬殺できる能力をもつ。(具体的には彼女が両の掌をすり合わせた動作をするだけで、攻撃対象は、まるでプレス機にかけられたかのように瞬時に圧殺される)

映画好き。

パワー

デンジの同僚。血の魔人。

自分の血を自在に操る能力を持つ。

血で武器を生成して攻撃したり、出血を止めることが可能。

容姿は人間だが人間のエチケットや常識、マナーは全く持ち合わせていない。トイレも流さない。

『ニャーコ』と名付けた猫をとても大切に可愛がっている。

魔人になった経緯は不明。

早川アキ(先輩)

マキマの部下でデンジの3年先輩の男性。マキマのことが好き。デンジのことは嫌い。

マキマの指示で、デンジとパワーを自室に住まわせることになってしまった苦労人。

最強の悪魔と言われる「銃の悪魔」に家族を殺された過去をもち、復讐のためにデビルハンターになった。

「狐の悪魔」「呪いの悪魔」「未来の悪魔」と契約を結んでおり、これらの悪魔を呼び出して戦う。

姫野(先輩)

通称「ゲロ先輩」。(酔ってデンジにぶちかました描写があまりにも衝撃的だったことから)

隻眼で眼帯、煙草がトレードマーク。デンジの先輩でアキのバディ。

詳細は明らかになっていないが、デビルハンター歴はかなり長い。

「幽霊の悪魔」と契約していて、「腕」を自由自在に操ることができる。

サムライソードとの激戦においてバディのアキを守るため自分の全てを「幽霊の悪魔」に捧げ、死亡。

サムライソード

かつてデンジを利用し、そして最終的に彼に殺されたヤクザの孫。

祖父を殺したデンジのことを恨んでいる。

「刀の悪魔」に変身し、切れ味鋭い刀身と目にも止まらぬ居合切りでデンジたちを苦しめる。

殺しても死なない驚異的な生命力をもつ。

レゼ

外見上は普通に可愛いJK。しかしその正体は「爆弾の悪魔」。

自身を爆発させて攻撃したり、相手を爆発させて吹き飛ばしたり、爆発させた空気を利用して高速で移動できたり、とにかく爆発的に強い。

「銃の悪魔」の仲間とされているが詳細は不明。

はっきりしていることは、デンジの心臓を狙っているということ。

『チェンソーマン』読みどころ

映画的表現技法

映画でよくあるスローモーション描写。

引き金を引いて発射された銃弾は、ゆっくりゆっくりと空間を捩じり、裂きながら、確実に獲物に直進する。そして、獲物に触れたと同時。銃弾は、まるで、自分の本来の速度を“思い出したかのように”獲物を容赦なく貫く。

映画でよくあるやつです。

『チェンソーマン』はそういった映画的表現を、擬音や背景・集中線などを駆使し、コマ割りを巧みに操り、読者の視線を誘導して、見事に描き切っています。圧倒的センス。

松本大洋や大友克洋…日本を代表する偉大な漫画家にも通じるものがあると言えば、褒め過ぎでしょうか?いや、決して褒め過ぎではないでしょう。

笑えてしまうほどの、ぶっ飛びヴァイオレンス描写

もう一つ映画的な点を挙げるとするなら、それはやはり、徹底的なヴァイオレンス描写でしょう、

例えば、マーティン・スコセッシ。例えば、クエンティン・タランティーノ。例えば、北野武。

古くは、黒澤明などもそうでしょうか…

かの名監督、名作に共通してみられる「笑ってしまうほど悲惨なヴァイオレンス描写」。

自分とはかけ離れた世界の出来事だからこそ、そのむごたらしいヴァイオレンス描写を見ると、人は思わず「おいおいマジかよ」と、怯えながらも笑ってしまうものです。

例えば、タランティーノの長編デビュー作にして不朽の名作「レザボアドッグス」の名シーン。耳切りダンスシーン。

(*暴力描写が苦手な方は閲覧注意)

人間の根底にある狂気と笑ってしまうほどの暴力描写。

それでいて、(言葉を選ばずにいえば)スタイリッシュ。おしゃれ。

やはりこれに尽きます。センスとバランス感覚。

暴力と笑いは紙一重とは言いますが、まさにその通り。紙一重のバランスで作品に落とし込むセンス。

こういった描写が数多くみられるのが『チェンソーマン』の特徴でもあります。

第一話からすでにこれですから。ジャンプでよく連載できたなぁと思います、本当に。

こういった描写はひたすら突き抜けて描くからこそ、凄みが出るし、同時に凄すぎて笑ってしまうものです。

もちろんただグロいだけでは、いけません。

やはり漫画においてもセンスとバランス感覚。表現の一つとしてイケてるかどうか、です。

上の見開きのコマにしても、やっぱり非凡なわけで。

こういった描写、たしかに最近のジャンプにしては過激な描写です。ただ、今一度『北斗の拳』や『ジョジョの奇妙な冒険』を読んでみてください。笑えるほど過激ですよ。

苦情や批判をビビらない姿勢が、何より「ジャンプ的」だと思いませんか?。

何でもかんでも綺麗に清潔にすればいいってものではないし、そればかりが当たり前になってしまうと、漫画の面白さの本質は失われてしまいます。

ときには、歪で粗削り、まさしくチェンソーの歯のような作品があってもいいでしょう。

一人称が「俺」の主人公

主人公デンジのキャラクターがとにかくいい。最高です。

思い返してみれば、2010年代の漫画作品は、「クラスでは冴えない、地味目なイケてない男子」パターンの主人公が多く描かれていたように思います。

例えば、同じくジャンプ作品の「僕のヒーローアカデミア」の緑谷出久(デク)は、まさにそういう主人公像ですね。

分かりやすく言えば、「一人称が僕」の主人公。

もちろん、そういった主人公が悪いわけではないし、僕は「僕のヒーローアカデミア」も、第一話からずっと大好きです。

ただ、そういった主人公が増えすぎたのが、2010年代という時代だったように思います。

「冴えない僕たち」の群雄割拠。

悟空やルフィ、ナルトのような、かつてのTHE主人公的な主人公は、随分と少数派になりましたよね?

彼らの一人称は「俺」です。

「一人称が俺」の主人公は、もはや絶滅寸前。そんな2019年。

でも、いや、だからこそ、そろそろ読みたいと思いませんか?「俺」が、主人公で活躍している作品を。

ありますよ。それが『チェンソーマン』です。

自分の欲望にどこまでも真っすぐに貪欲で自分勝手なデンジですが、ぶっちゃけ悟空もルフィもナルトもそうと言えばそうです。

少年漫画の主人公の、ひたすらに真っすぐで純粋な姿に、僕らは憧れ、夢を見てきたはずです。

時代が待ちわびた「俺」が、デンジです。

今の若者を反映する主人公像

デンジには夢と呼べるものは何もなく、望むものはただ「三食の飯と温かい寝床」。ただ、それだけです。

こういったデンジの欲(欲の無さ)は、今の時代の若者を如実に表しているといえます。

経済が良くなる見通しもないのに、課される税は増える一方。政治家は市民の血税を、まるで湯水のごとく自分たちのためだけに使う。お先真っ暗な日本。それを無理やり背負わされる若者。

「あれぇ?僕たちなんか悪いことしましたっけぇ?」

こんな状況でどうやって夢を見ろ、希望を抱けというのでしょうか?ウケますよね。

普通に、ただ普通に暮らせれば、それだけでいい。

今の若者の多くの夢がこれです。これ以上でも以下でもなく、これだけです。

「三食の飯と温かい寝床」当たり前、普通、ただそれだけを望むデンジは、今の日本の若者をかなり明確に表しているキャラクターです

だからこそ、若い世代にとってはこの上なく共感できる主人公だと思います。

あとがき

鬼才・藤本タツキが描く新時代の少年ジャンプ漫画『チェンソーマン』が面白い!

2019年3月、『チェンソーマン』のコミックス第1巻が発売になったタイミングで、当時の僕が書いた記事です。

正直、記事を書いた本人ですら今読み返すと何を言っているのか、何を伝えたいのか、さっぱり分かりません。

呆れるほどの興奮状態です。

とにかく、今と同じように『チェンソーマン』をひどく気に入っているらしい。ということだけは伝わります。


様々なカルチャー(特に映画や音楽)からの影響を感じさせつつ、全ての要素が散らばることなく作品に結実し、唯一無二のオリジナルとして昇華されている。

言葉に出せば薄っぺらいですが、本来、とんでもなく難しいことです。

FT

2019年のこの時代にまだこんな漫画の表現が残されていたんだ、しかも日本一メジャーな漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』で、これを連載するとか!

と、思います。読めば、必ず。

やっぱり、チェンソーマンのデザインにしてもはっきりと異常なわけで、そもそも。

色々ぶっ飛んでるし絶対にあり得ないはずなのに、「マジ感」というか、「いや、もしかしたらこんな世界もあるんじゃないか」と、思わせる説得力と力強さがある作品です。

既存の漫画には飽きてしまった方、他とは違う漫画を読みたいと思っている方、でも昔のような「俺」主人公の痛快王道少年漫画を読みたいと思っている方…

『チェンソーマン』が、おすすめです。