2019年に公開された『ブラック・クランズマン』は、ジョン・デヴィッド・ワシントンとアダム・ドライバーの主演俳優二人の名演技や、現代の社会を痛烈に批判したテーマが全世界で絶賛されたスパイク・リー監督の新たな名作です。
同年のアカデミー賞では、作品賞、監督賞(リー監督にとっては初)、助演男優賞を含む6つの賞にノミネートされました。(最終的に脚色賞を受賞)
人種差別は、遠い国の違う世界の話ではありません。
日本から一歩でも外にでれば、差別は大きな顔をしてそこかしこに、さも当たり前のように存在しています。差別の対象は日本人も例外ではありません。
牛乳
(タップできる)目次
『ブラック・クランズマン』の評価
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
とてつもないバランス感覚の上に成り立った作品です。
人種問題という極めて重く鋭い、攻撃的に迫るテーマを扱いながら、しかし、どこか笑えてしまう話でもある。
「えっ、そんな間抜けなことってある?うそでしょ?」と言ってしまいたくなる実話は、まさに、「現実は小説よりも奇なり」。
そして、あくまで娯楽作品であるという痛快な作風、素晴らしいバランス感覚。これぞスパイク・リー。
全世界で大絶賛されたのも納得の傑作です。
『ブラック・クランズマン』スタッフ&キャスト
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
『ブラック・クランズマン』スタッフ
『ブラック・クランズマン』スタッフ | |
---|---|
監督 | スパイク・リー |
脚本 | スパイク・リー |
製作総指揮 | スパイク・リー/ジョーダン・ピール |
脚本 | バリー・アレクサンダー・ブラウン |
音楽 | テレンス・ブランチャード |
監督・脚本:スパイク・リー
ブラッ・ムービーの雄、スパイク・リー監督による最新作『ブラック・クランズマン』。
本作は、彼の膨大なフィルモグラフィーの中でも、『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『マルコムX』級、最高傑作に匹敵する作品のひとつです。
『ブラック・クランズマン』キャスト
『ブラック・クランズマン』キャスト | |
---|---|
ロン・ストールワース刑事 | ジョン・デヴィッド・ワシントン |
フィリップ・”フリップ”・ジマーマン刑事 | アダム・ドライバー |
パトリス・デュマス(ストールワース刑事の恋人) | ローラ・ハリアー |
デービッド・デューク(KKK最高幹部) | トファー・グレイス |
クワメ・トゥーレ(差別撤廃闘争の指導者) | コーリー・ホーキンズ |
ジョン・デヴィッド・ワシントン
名優デンゼル・ワシントンの息子であり、過去にはスパイク・リー監督の『マルコムX』に子役として参加していたジョン・デヴィッド・ワシントン。
四半世紀以上の時を経て、スパイク・リー監督の作品に主演として出演、ドラマがあります。
端正な顔立ちでありながら、不敵さと無邪気さが入り混じった、ふてぶてしいまでの存在感が素晴らしいです。
クリストファー・ノーラン監督最新作『ネネット』にも主演することで、今後さらなる注目を集めるでしょう。

アダム・ドライバー
名作にこの人あり。
2010年代最大のブレイクを果たした俳優の一人、アダム・ドライバー。
とにかく、本当に素晴らしい俳優です。
彼の演技、彼が出演している作品に間違いはありません。

\『ブラック・クランズマン』を無料で観る/
ボタンをクリックするとU-NEXT公式HPに移動します。
無料体験キャンペーンがいつまで続くかわからないのでお早めに
*31日以内に解約すれば料金は一切かかりません
『ブラック・クランズマン』あらすじ
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
黒人刑事が白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」潜入捜査した実話をつづったノンフィクション小説を、「マルコムX」のスパイク・リー監督が映画化。1979年、コロラド州コロラドスプリングスの警察署で、初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース。署内の白人刑事たちから冷遇されながらも捜査に燃えるロンは、新聞広告に掲載されていたKKKのメンバー募集に勢いで電話をかけ、黒人差別発言を繰り返して入団の面接にまで漕ぎ着けてしまう。しかし黒人であるロンはKKKと対面できないため、同僚の白人刑事フリップに協力してもらうことに。電話はロン、対面はフリップが担当して2人で1人の人物を演じながら、KKKの潜入捜査を進めていくが……。
『ブラック・クランズマン』を観る前に知っておきたいこと
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
①:時代の変更
1978~1979年から1972年へと年代が変更されています。
理由1.映画史的問い直し
アメリカ映画史の暗部、パンドラの箱、タブー視されていた呪われた側面を、真正面からハッキリと問い直すためです。
スパイク・リー監督は本作で、「映画史的問い直し」をするという狙いがありました。
そもそも、なぜ、KKK(クー・クラックス・クラン)が掲げる白人至上主義的思想が始まったのか?
その背景には、『國民の創生』『風と共に去りぬ』という、映画の存在があった。あれらを、本当に“ただ”の名作扱いしていていいのか?
「映画史的問い直し」をするためには、白人映画と黒人映画を対比させる必要がありました。
本作では、名作とされる白人至上主義映画と、黒人中心に作られた映画ブラックスプロイテーション映画の対比が随所にあります。
ブラックスプロイテーション映画全盛期の70年代初期に時代を合わせることで、白人至上主義映画とブラックスプロイテーション映画の対比を、より分かりやすくしたのです。
理由2.映画的面白さの底上げ
2つ目は、映画的な面白さを底上げする「画の魅力」を作り出すためです。
70年代初期、あの時代ならではのファッション、アフロヘア、フレアパンツ、細身のレザージャケット、カラフルなタートルニット、デニムのセットアップ…
そして、若い黒人たちがザ・コーネリアス・ブラザーズ&シスター・ローズの『Too late to turn back now』(1972年)に合わせてダンスする印象的なシーン…
70年代カルチャーを存分に感じさせてくれる「画の魅力」が、本作にはあります。
他にも、ブラックパワー運動の盛り上がりと、それとは対照的にニクソン政権の発足、そして、勃発するベトナム戦争…
時代のうねりが大きかった72年だっかたからこその印象的なシーンが多く登場します。
②:小道具ではなく「今」買ったもの
野外で射撃に興じるKKKの一団。彼らは冗談を飛ばし笑いながら、的をめがけて銃を撃つ。
彼らが去った後、主人公ロンがその場所に立ち寄る。そこで目にする。
「何が的になっていたのか」
カメラが次第に引いて、「的になっていた何か」が徐々に映し出されるシーンですが、その何かとは「絵」です。
逃げ惑う黒人を描いたボード。絵ですが、歴史的には間違いなく実在した人々の姿です。
白人の銃弾から逃げ惑う黒人。その苦しみ、影があの「絵」です。
そして、驚くべきことに、あの「」は、小道具として作ったものではなく、実際に売っていたものです。
スパイク・リー監督自身が、実際にインターネットで購入した品。そしてロンを演じるジョン・デヴィッド・ワシントンに言ったそうです。
「これ、今、実際に買ったものだから」
それを聞いたジョン・デヴィッド・ワシントンの表情は、演技ではなく100%ガチです。
このシーンは必見です。

\『ブラック・クランズマン』を無料で観る/
ボタンをクリックするとU-NEXT公式HPに移動します。
無料体験キャンペーンがいつまで続くかわからないのでお早めに
*31日以内に解約すれば料金は一切かかりません
『ブラック・クランズマン』感想
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
黒人刑事が、同僚の白人刑事と2人で1人の人物を演じながら、白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(通称 KKK)」に潜入捜査した実話を、スパイク・リー監督が映画化。
これだけ聞いても絶対にただの(普通の)映画ではないと思っていましたが、まさかここまでとは…
正直、本作をどのような心持ちで鑑賞すればいいのか…ラストまで気持ちが定まらないまま、最後の最後でどえらく重たい現実を突きつけられました。
コメディとして観ればいいのか、痛快なバディムービーとして観ればいいのか、重厚な人間ドラマか、強烈な社会風刺作品か…
正解は、全部でした。
『ブラック・クランズマン』には、全てが含まれています。
優れた映画とは、観ただけでは終わらず、観たあとにこそ頭に残る作品だと思います。
劇場を後にした自分の頭の中を、映画のメッセージがぐるぐる反芻する。
メッセージの強度、刺さる深度が尋常ではない映画、それこそが「最高の映画」であると思います。
衝撃のラスト
物語としての決着、人種を超えたチームワークで身内の悪いやつもやっつけた、KKKのボスに壮大をネタバレをした瞬間の「ざまぁ!」的してやったり感。観客を包みこむ快感、カタルシス。ハッピーエンド、めでたしめでたし…
では、終わらないのがスパイク・リー監督。
映画ではない、「創作」ではない、ナイフの切っ先のように突きつけられる、というか、ナイフを突き刺される「現実」。
「映画の撮影が終わった後に……本当は最初に“とある”エンディングがあったんだけど、映画を撮り終わった後にあの事件が、映画の最後に出てくる事件が起こって。「もうここを結末にするしかないであろう」という風に、つくり変えた。で、「もう元のエンディングは、どうやって終わろうとしていたのか思い出せない」
スパイク・リー監督
『ブラック・クランズマン』を観て、そし、てあのラストを観て、どう思うのか…
遠くの国の出来事、対岸の火事だと思うのか…
あなたの目で確かめてください。
あとがき
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
世に蔓延る「人種差別問題」という、重い、非常に重い、人類が立ち向かうべきテーマを扱った本作ですが、この映画はあくまで「娯楽作品」です。
観ていて嫌な気持ちになることはありません。
ただ、考えさせられます。
「自分はどうあるべきか」
何度も何度も頭の中を反芻します。
メッセージの強度、刺さる深度が尋常ではない映画、それこそが「最高の映画」であると思います。