第72回アカデミー賞にて、「撮影賞」「視覚効果賞」「録音賞」の3冠に輝いたサム・メンデス監督最新作『1917 命をかけた伝令』。
日本国内にたった二つしかない、IMAX次世代レーザースクリーンにて鑑賞。
映画『1917』を観た。大大大傑作。これはあれだ、超絶ハードモードな「SASUKE」。数々の難関ステージを(自陣→最前線→敵陣→その先に待つ味方)、行く手を遮る困難を(眼球を突き刺す爆風、頭上を掠める銃弾、燃え盛る街…etc)、ノンストップで駆け抜ける若き兵士。対になったOPとEDに涙が零れた。 pic.twitter.com/2YM4iRIyTw
— FT (@walnutmilkwheat) February 15, 2020
関西近郊の方は、「109シネマズ大阪エキスポシティ」の11番シアターでの鑑賞をおすすめします。
(ビル6階建てに相当する)高さ18メートル超×幅26メートル超の日本最大スクリーンに、高解像度の4Kツインレーザープロジェクターで映し出される映像は、通常の映画館では絶対に味わえない臨場感を、没入感を、生み出します。
『1917 命をかけた伝令』は、まさに、このスクリーンで観るべき映画です。
映画館の詳しいレポは、以下の記事をご参照ください。

※関東近郊の方は、「池袋グランドサンシャインシネマ」に同等のスクリーンがあります。
本記事では、『1917 命をかけた伝令』の感想をまとめています。
結論から申し上げると、文句なしの大大大大傑作です。
そして、必ず映画館で観るべき映画です。
(タップできる)目次
『1917 命をかけた伝令』の評価
かつて、スティーブン・スピルバーグは、「プライベート・ライアン」で、戦争における”上陸”作戦を描いた。
かつて、クリストファー・ノーランは、「ダンケルク」で、戦争における”撤退”作戦を描いた。
そして、サム・メンデスは、『1917 命をかけた伝令』で、戦争における”伝令”を描いた。
立ち込める爆風、目に突き刺さる砂ぼこり、腐敗した遺体、鉄の味がする水、燃え盛る炎、頭上を飛び交う戦闘機、肉を貫く銃弾、人をゴミのように吹き飛ばす砲弾…
自陣から、最前線、敵地、その向こうに待つ味方の元へと”移動”する舞台と時間。
今、地球中で生きている誰一人として目にしたことがない100年前の戦場。その場所に、今、まさに自分がいるかのような没入感。
驚異の全編ワンショットによる奇跡の映像体験。
「映画館で観るべき映画」、そんな使い古された謳い文句を、今こそ声を大にして言おう。
Milk
『1917 命をかけた伝令』スタッフ&キャスト
『1917 命をかけた伝令』スタッフ
スタッフ | |
---|---|
監督 | サム・メンデス |
撮影 | ロジャー・ディーキンス |
脚本 | サム・メンデス/クリスティ・ウィルソン=ケアンズ |
製作 | サム・メンデス/ピッパ・ハリス/ジェイン=アン・テングレン/カラム・マクドゥガル/ブライアン・オリバー |
編集 | リー・スミス |
音楽 | トーマス・ニューマン |
監督:サム・メンデス
「007 スカイフォール」でシリーズ最高の興行収入を叩き出した名匠サム・メンデスが完成させた、全く新しい映画体験。
約2ヵ月の撮影期間、通常の映画作品のおよそ50倍もの回数のリハーサルを経て完成させた、最初から最後まで全ての瞬間が途切れることの無い「一本の糸」として繋がる、究極のワンカット映画『1917 命をかけた伝令』。
この映画は、私がイメージしていた映像そのものになったと断言できる。スクリーンに映し出されるものは、初期の私のイメージそのものだと思ってほしい。
撮影監督:ロジャー・ディーキンス
「14回」。
ロジャー・ディーキンスがアカデミー賞「撮影賞」にノミネートされた回数、じつに、14回。
「ブレードランナー2049」(2017)でついに同賞に輝いた、ディーキンス。
その技術と存在感、実力は、ハリウッドでも右に並ぶものはいないほど。
映画界を代表する天才撮影監督の一人。
ワンカットでの撮影の効果は、スクリーンで観ると全編がひとつにつながって見えることだ。観ている人を映画へと引き込む、すごいテクニックで、あの没入感は実際に観てもらわらないと分からないだろう。
『1917 命をかけた伝令』キャスト
キャスト | |
---|---|
スコフィールド上等兵 | ジョージ・マッケイ |
ブレイク上等兵 | ディーン=チャールズ・チャップマン |
エリンモア将軍 | コリン・ファース |
マッケンジー大佐 | ベネティクト・カンバーバッチ |
『1917 命をかけた伝令』あらすじ&概要
「007 スペクター」「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」などで知られる名匠サム・メンデスが、第1次世界大戦を舞台に描く戦争ドラマ。若きイギリス兵のスコフィールドとブレイクの2人が、兄を含めた最前線にいる仲間1600人の命を救うべく、重要な命令を一刻も早く伝達するため、さまざまな危険が待ち受ける敵陣に身を投じて駆け抜けていく姿を、全編ワンカット撮影で描いた。1917年4月、フランスの西部戦線では防衛線を挟んでドイツ軍と連合国軍のにらみ合いが続き、消耗戦を繰り返していた。そんな中、若きイギリス兵のスコフィールドとブレイクは、撤退したドイツ軍を追撃中のマッケンジー大佐の部隊に重要なメッセージを届ける任務を与えられる。戦場を駆け抜ける2人の英国兵をジョージ・マッケイ、ディーン・チャールズ=チャップマンという若手俳優が演じ、その周囲をベネディクト・カンバーバッチ、コリン・ファース、マーク・ストロングらイギリスを代表する実力派が固めた。撮影は、「007 スペクター」でもメンデス監督とタッグを組んだ名手ロジャー・ディーキンス。第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞を含む10部門でノミネートされ撮影賞、録音賞、視覚効果賞を受賞した。
『1917 命をかけた伝令』感想
はっきり言ってストーリーはあってないようなもの。というか、本作においてストーリーは、それほど重要ではない。
味方のピンチを救うため、二人の若い兵士が命をかけて伝令を届ける。
それだけ。最初から最後まで、ただ、それだけ。
「ただ、それだけ」をワンカットの映画として創り上げてしまった、その事実が何より恐ろしい。
1本の映画として、しかもワンカットで撮ろうという世にも恐ろしいアイデアと、実際にそれを形にしてしまう途方もない才能と尋常ではない熱量…
本作には完成直後の「ALEXA MiniLF」という、最新の撮影カメラが使用されたそうだ。
撮影監督のロジャー・ディーキンスがこれまで愛用していた「ALEXA LF」という大型カメラのラージフォーマットセンサーを搭載していながら、小型軽量ボディである「ALEXA MiniLF」は、本作における圧倒的没入感を創り出すことに成功した。
おそらく、その他にも多くの最新技術が駆使されて本作は完成に至ったのだと思う。
しかし、結局は、人なのだ。人の力が、情熱が、思いが、仕事が、この映画を形にしたのだ。
これは大げさではなく、通常の映画のの50倍くらいリハーサルに時間をかけた。セットを作る前からリハーサルを開始し、まずは更地の状態で俳優に台詞をいってもらい、その距離に合わせて旗などで地面に印をつける。リハーサルを繰り返しながら、セットを徐々に完成させる。。俳優たちはその間、演技が肉体の記憶として積み重なっていく。天候が「曇り」になったと同時に撮影を開始し、俳優たちは肉体の記憶ですぐに対応してくれた。
「主観」と「客観」、そして主人公たちが進む風景の広さを「俯瞰」して取る必要がある。そのバランスが最も難しかったかもしれない。通常の映画なら、これらの異なるショットを編集で繋ぎ合わせ、イメージ通りの仕上がりにするのだが、この映画ではそれが不可能だったからね。ー監督:サム・メンデスー
あとがき
スタートからゴールまで”伝令”を届ける下級兵士の命懸けのミッションを描いた「1917 命をかけた伝令」。
サム・メンデスは、映画史に名を連ねる偉人たちから魂の”伝令”を受け取って、本作を創り上げた。
アルフレッド・ヒッチコック「ロープ」→アルフォンソ・キュアロン「ゼロ・グラビティ」→アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」…
そして、サム・メンデス「1917 命をかけた伝令」。
サム・メンデスからの”伝令”を受け継ぐ者は、果たしてだれなのか…
映画の進化に、終わりはない。
ぜひ映画館で、そして可能であれば、「IMAXシアター」で、鑑賞していただきたい映画作品です。
私は映画を撮るたびに、何か世界に影響を与えてほしいと願っている。私は、伝えたい物語を作品にする。フィルムメーカーとして、自分の伝えるテーマにに対しての、様々な反応こそが世界を変える糧になると信じている。ーサム・メンデスー