【ネタバレ&感想】映画『何者』をもう二度と観たくないと思いながらも二回も観てしまった理由

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  • 朝井リョウの原作小説
  • 三浦大輔監督作品中田ヤスタカ×米津玄師の書下ろし主題歌
  • そして、今の日本を代表する若手実力派俳優たち

観に行くべき理由はたくさんありました。

そして観終わった直後の感想は

観に行かなきゃよかった…

です。

でも1度目の鑑賞から48時間後、ぼくの足は再び地元のTOHOシネマズへと向かい、本日二度目の映画『何者』を鑑賞をしてきました。

圧倒的に、そして徹底的に若者の今をリアルに切り取った描写

観客は自分ごととしてこの映画を観ることとなります。

そう、まるで自分そっくりなんです。主人公の拓人が。まるで自分を観ているようで一瞬先を観るのが怖くなってくる。
そして周りの登場人物も、「おるおる!こういうやつ!」って感じでとことんリアルです。

映画『何者』登場人物と変わらない若い世代、20代前半の人は絶対に観にいくべきです!

と、言いつつも、大声では人には進められない、進めたくない、そんな作品です。

ただ一つ言えることは、『誰もみたことのない青春就活エンターテイメント』を期待して観にいくと裏切られます。

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何者とは?

そもそもこの映画『何者』ですが、原作小説があります。

作者は直木賞受賞の気鋭の作家、朝井リョウ。

そんな朝井リョウの代表作『桐島、部活やめるってよ』

こちらの作品も映画化されていました。

感想とネタバレ

ネタバレ注意のあらすじ


物語の主人公は御山大学の吹き溜まりこと社会学部の大学生、拓人。

そんな拓人が大学時代に唯一熱中していたこたが、この物語でも大きな鍵となる“演劇“である。演劇サークルの脚本家として活動していたが、就職活動を機に演劇の世界から身を引いた拓人。

就活を通して繋がった4人の戦友とともに内定を狙って活動をはじめるのだが…

表向きは他人と仲良く接する拓人。しかしその実、友人のTwitterや言動をなどをつぶさにチェックし、一歩離れた場所から上から目線で観察分析することで、周りを見下し冷笑していたのだった。拓人は自分の“イケてる分析“を裏アカウント「@何者」でツイートし、自分のプライド・自我を保っていた。

他人の必死さ、痛々しさ、今を全力で生きて“何者”かになろうとしている友人を、上から目線で嘲笑い馬鹿にしていた拓人…

クライマックス、拓人は、結局自分が1番想像力に欠け、傲慢で怠惰で惨めな子供だと気付き(あるいはそのことを認め)居ても立っても居られなくなり、ある場所へと走り出す。

走り着いた先には端月の(拓人)のバイト先。

端月は拓人に言う。「拓人君の書いた演劇の脚本が好きだった」と。

その言葉に拓人は泣き崩れてしまう。

翌日、予定通り面接会場へと向かう拓人。拓人は不器用でダサくてみっともないながらも、はじめて自分自身の言葉で自分を伝えようとする。

キャストの神がかった演技合戦

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佐藤健(冷静分析系男子@二宮拓人)

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有村架純(地道素直系女子@田名部瑞月)

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二階堂ふみ(意識高い系女子@小早川理香)

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菅田将暉(天真爛漫系男子@神谷光太郎)

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岡田将生(空想クリエイター系男子@宮本隆良)

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山田孝之(達観先輩系男子@サワ先輩)

もうね、上手過ぎるんでよ。この人たちの演技が。この人たちの演技合戦を観るためだけに、劇場に足を運ぶ価値ありです。

今回、この6名はほぼほぼ役作りなどしていない印象を受けました。

なんというか、佐藤健は佐藤健だし、有村架純は有村架純なんです。いや、かれらの素をぼくが知ってるわけもありませんが、本当に自然というか、役を演じているという雰囲気が一切ありませんでした。

主題歌・劇伴と作品の共鳴


何者の主題歌、そしてサウンドトラックを手掛けたのは稀代の音楽プロデューサー中田ヤスタカ。
きゃりーぱみゅぱみゅやperfume、つまり今の日本の若者文化の象徴ともいうべき音楽を数多く手掛けてきた中田ヤスタカの起用は、これ以上考えないくらいベストな選択だったと思います。
米津玄師とのコラボレーション楽曲「NANIMONO」。もちろん中田ヤスタカが手掛けた“音”もですが、米津玄師が作詞した“言葉”も、就活という荒波に揉まれながら結局は一人ひとり孤独に戦うことを強いられる今の若者に、ピタリと合っていると思いました。

就活生のリアルを妥協なく描き出す

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この映画では全編通して、新卒の就職活動、そのほぼ全てのプロセスが描かれています。

現在24歳、2015年卒のぼくが観てもめちゃくちゃリアルに描かれています。恐いくらいに。

  • 人数多すぎる合同企業説明会
  • 友達と協力し合うwebテスト
  • 意味不明な筆記試験
  • うざい奴が1人はいるグループディスカッション
  • 死ぬほど緊張する面接
  • ライフポイント削るお祈りメール
  • 面接結果を待つ生きた心地のしない緊張感

あー、もう思い出しただけで胃がキリキリする。

就活生の心の動き、面接官の憎たらしい顔つき。本当によく検証され考え抜かれています。

就活生のリアルを描き出すことに一切の妥協がない。

大学生、就活生、そして現代の就活をイマイチ把握できていない親御さんには是非観ていただきたい。現代の就活はこれほどまでに過酷なんです。

散々しんどいシーンばかりあげましたが、しんどいシーンだけじゃないんです。

最後に光が見える希望のシーンもちゃんと描かれています。

鑑賞後に胸糞悪いなー、後味悪いなー、ということにはなりませんのでご安心を。

青春が終わる 人生が始まる


この映画はどうにもこうにも、宣伝ミスったやろって思ってたんですよね。
“誰もみたことのない青春就活エンターテイメント”とか“新感覚人間観察エンターテイメント”とか、とにかく大衆受けするような言葉を並べ立てて宣伝していましたが、そんなスカッとしたエンタメ作品じゃありません。むしろホラーです。

でも、

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「青春が終わる」

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「人生が始まる」

このニ文は確かにこの作品全体のことを端的に表しているなと思ったんです。

人を見下し、観察し分析することで安心して自分を守ろうとする拓人。

自分は他の誰とも違う特別な存在だと信じて疑わない、100%を目指すと言いながらも就活にも仕事にも決して100%では取り組まない隆良。

この二人は特にモラトリアムの象徴的な二人でした。

中々大人へと踏み出せない、自分が子供だと気付いていながらも見て見ぬ振りをして、見えない鎧を纏って自分を守ろうとする、どこにでもいる青年。そう、本当にどこにでもいる青年なんです。

しかし、そんな青年たちにもモラトリアムの終わりは突然に訪れます。
そしてその終わりの多くは、内からではなく外からの衝突によって。
隆良は端月からの反論によって。
拓人は理香やサワ先輩からの厳しい指摘によって。
2人はそれぞれようやく鎧をとり外を見ようとするのです。
そのシーンはまさに、

「青春が終わる」「人生が始まる」でした。

不器用でダサくて惨めで泥臭くて醜くても、自分という存在を、自分はここにいるんだということを周りに伝えなければならない。何者かであることを周りに伝えなければならない。

それが大人だ。

そんなメッセージが感じられました。

ラスト20分、一気に動き出す物語。


この映画はラスト20分のための映画です。
ラスト20分は特に素晴らしい。

物語の終盤、拓人は裏アカウント「何者」を理香に暴露されます。

理香に裏アカウントを暴露され、逃げ出すように部屋を出る拓人に、隆良が発したセリフ。

「だって拓人、就活2年目だもんな。」の一言。

拓人が就活2年目であることが発覚し、ここから物語は怒涛の動きを見せます。

思えば拓人が就活2年目だという、布石は至る所に散りばめられていました。

舞台演劇仕立てで演出され、総括される『何者』の物語

物語のクライマックス、拓人が裏アカウント「@何者」に書き込んだ内容・言葉を、物語序盤からのシーンを舞台演劇仕立てで魅せる演出は見事の一言。一気に演劇演出で捲し立てられる『何者』の物語。このシーンは本当に圧巻です。

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あと個人的に思ったのが、演劇演出のシーンが終わった後に、拓人が舞台を鑑賞している満員の観客にお辞儀をするシーンで映し出される匿名で顔も見えない大量の観客は、そのまま映画を鑑賞している僕らなのではないか。ということ。

今まで何者という物語を、まるで自分ごとのように感じて観てきたぼくら映画鑑賞者にとってこのシーンは、「『何者』という物語とあなたたちは関係ない。拓人のように安全圏で他人の様子を眺めていただけ。」そう言われ、一気に他人事として突き放されたように感じました。
そう、結局ぼくらは一観客でこの物語には関係ない。安全圏でポップコーンを食べながら映画を眺めているだけなんです。
「あなたはこの物語の主人公によく似ているけど、決して違う人物だ。」

「でもだからこそ、あなたは、あなたの人生の中でドラマを見つけてその主役として生きていけるんだ。」

そんなメッセージを感じたぼくは考え過ぎでしょうか。

まとめ

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映画『何者』、レビューではかなり評価が低いですが、決して低評価されるような映画ではありません。
完全に宣伝のせいです。

ネットの評価に惑わされないでください。

どこにでもあるリアルをあなたの目で確かめてください。