思い出、ぼくらのユートピア。(懐かしいという感情)

母親の子宮からオギャーと元気いっぱいに飛び出したあの日から(未熟児だったので正確には元気はなかったみたい)もう25年が経ちました。ぼくは今日も元気です。
四半世紀も生きていると、いよいよ“懐かしい”という感覚が分かってきたよ、今日はそんな話です。どうでもいい独り言です。

『クレヨンしんちゃん モーレツ嵐を呼ぶオトナ帝国の逆襲』

観たことありますか?観たことない人いたらマジで観てください。そこらのお涙頂戴映画よりよっぽど胸にくるから。特筆すべきは野原ひろしの人生を辿った3分間、あの3分間だけで殆どの名作映画に勝てる。あのシーンが全て。マジでやばい。
『オトナ帝国』は、数あるしんちゃんの名作映画の中でも間違いなくナンバーワン、別格です。そもそも原恵一氏が監督・脚本・絵コンテを務めた97年の『暗黒タマタマ大追跡』〜02年の『アッパレ戦国大合戦』までは全部名作なので観て損はない。この時期のしんちゃん映画はまじで神がかってます。あ、今度しんちゃん映画の記事書こうっと。

で、なんでしたっけ。あ、そうだそうだオトナ帝国だ。作品のテーマでもある「懐かしい」という感覚、または「ノスタルジー」。ひろしやみさえ、映画の中の大人たちがしきりに言っていた“懐かしい”という感覚が分からなかった。理解はできた。「あぁ、昔を思い出してるのね、で、なに?なにがそんなに良いもんなの?」

「懐かしい」と言う感覚を、実感したことはなかった。上映当時は10歳そこそこなんだからそりゃそうだ。
大好きな作品だから中学、高校、大学生になってからもことあるごとに鑑賞しても、“懐かしい”は分からなかった。10代なんて人間1年生みたいなひよっこなわけで、“懐かしい”なんて感覚はやっぱりまだ分かるわけがなかったのだ。過去との距離が近過ぎる。

生物学的に発生したあの日から25年が過ぎ、成人式から5年過ぎて、社会の荒波を航海し始め、この世に生まれたことを後悔するような夜を超え、
同級生は結婚し幸せな家庭を築き、男前だったあいつは贅肉という名の鎧を身に纏い始め、なんなら「お前…!髪の毛が…。」みたいなやつだっている。誕生してから四半世紀の重みをひしひしと感じる。

昔とは違う違う状況、環境。それらによって呼び起こされる昔の記憶。遠いあの日々。決して戻ることのできないあの日々。

ああこれが“懐かしい”か…。

「懐かしい」

〔動詞「懐く」の形容詞化〕

昔のことが思い出されて,心がひかれる。 「ふるさとが-・い」

久しぶりに見たり会ったりして,昔のことが思い出される状態だ。 「十何年ぶりに逢って,ほんとうに-・いなあ」

過去のことが思い出されて,いつまでも離れたくない。したわしい。 「佐保山をおほに見しかど今見れば山-・しも風吹くなゆめ/万葉集 1333」

心がひかれて手放したくない。かわいらしい。 「あさましきにあきれたるさま,いと-・しうをかしげなり/源氏 花宴」

懐かしいスイッチがひとたびONになると気づく。日常に転がる「瞬間ノスタルジック呼び起こし装置」の多さに。マジでそこかしこに転がってやがる。

特に音楽。

聴覚から攻められるのはヤバい。逃れようがない。されるがまま。

「10代に聴いた音楽は特別だ。」人生の先輩方から耳にタコができるほど聞かされてきた、この言葉の意味が理解できた。自分もおじさんになったんだなぁ。

こりゃ特別だわ。今現在もその音楽が好きか嫌いかは一旦置いておいて、とにかく特別。思い出で武装された音楽ほど強いもんはない。ぼくでいうと、「オレンジレンジ、ラッドウィンプス、バンプオブチキン」まぁ、王道。漫画でいえば週刊少年ジャンプ。それくらい王道。25〜30歳の方にはご納得いただけるラインナップ。これらを聴いたらもうダメ。瞬間的にタイムスリップしちゃう。

意味もなくコンビニで溜まってたあの日々とか、いかに大きな音を出してリプトンティーのパックを踏み潰すかとかもはや全く意味のないことを競い合ってゲラゲラ笑ってたあの日々とか、スタンドバイミーよろしく友達と自転車で和歌山まで行った夏のあの日とか、彼女から貰った手編みのマフラーがまるで雑巾のようだったけど喜んだふりして首に巻いていたあの冬のこととか、その彼女に振られた暖かい春の日のこととか…とにかく思い出してしまう。

で、そんな日々のことを旧友と話す。あの日々を一緒に過ごしてきた友達と酒飲みながら話す。
思い出ってのはただでさえ美化されるものなのに、あの時のおれらはあーだこーだって、もはやそれが本当にあったかどうかも定かじゃない、政治家の公約くらい曖昧で人気のパンケーキ屋のパンケーキほどもフワッフワッな記憶の中の日々を懐かしむ。

あぁなんて楽しいんだ、気持ちいいんだ。真冬にあったかい一番風呂に浸かってる、そんな感覚。

25歳。ついに分かってしまった“懐かしい”という感覚、感情。こりゃ気持ちいい。
記憶の中の思い出たちは誰にも邪魔されないユートピアみたいなもんなんだな。

「昔を懐かしむなんて年寄りクセェな、絶対そんなん嫌やわ!」
まぁそういうなよ、若い日のおれ。案外悪くないよ。

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